私は本気の恋をしたことがない。
第一、恋なんてめんどくさいだけ。
そう思っていた。

君に出会うまでは―――。


「さゆか、準備できた?」
あたしよりも緊張しているママがあたしに話しかける。
「できたよ、ママ。」

あたしは高橋さゆか(たかはし・さゆか)。
今日から中学生になる。
初めて歩く通学路。
満開の桜並木。

ついに、校門の前へ。
「これからここに通うのかあー」
緊張と期待を胸に門をくぐった。

掲示板に張り出されているクラスを見て
クラスを確かめる。

あっ、麻衣も一緒じゃん。

麻衣と言うのは、秋山麻衣(あきやま・まい)。
同じ小学校出身でいわゆる、悪友。

「さゆかーあっ」
来た来た来た来たっ

「同じクラスだねっ!めっちゃ嬉しい!」
喜び飛び跳ねる麻衣がまぶしい。

仕方なく、麻衣と一緒にクラスに向かった。
「1年4組!ここだねっ」
「テンション高いね。」
「さゆかが低すぎっ!」
そのテンション、あたしに分けてほしいよ。

あたしの席は、真ん中の列の5番目。
なかなかの席だな、と思っていると
担任らしき人が入ってきた。

「はーい、1年4組のみなさん!
 私が担任の、坂本です。
 よろしくお願いします!」

無駄に暑苦しい・・・。
あごが出てるし。
ここで、麻衣とアイコンタクト。
麻衣も同じこと思っていたらしく、
あご突き出したポーズをする。