「離して、離してぇ~~~。」

 トモコの悲痛な叫びが――

「絶対離さない。」

 お父さんの腕の力が強くなる。

 トモコは、今にも死にそうな顔だ。


「げほぉ、げほぉ」

「僕は本気だから。」

 ふと、トモコの頬に片方の手を当て、じっと見つめる。

 少し距離が出来た。

 トモコの顔はもう真っ赤だ。


「僕は、あいつらになんと言われたっていい。
つきあってくれ。」

 その時、トモコがお父さんのすねを蹴った。

「いった~~~~~ぁ。」

 トモコが逃げ出す。

「美陽(トモコ)待て。」

 お父さんは、体勢を立て直し、また走る。