ワンダー、フルカラー

雑誌の方は帰ってから読むらしく、臼田くんは帰りの電車に乗っている間は静かに外の景色を眺めていた。
私はというと、そんな臼田くんの隣で逆に電車の中の様子を眺めている。

(恋人多いなぁ…)

現在の季節は春。最近まで桜が咲いていた。
新学期早々に彼氏または彼女を作った人は学校にも何人かいる。友達にも数人そんな人がいたような…気がするけれど誰だかは忘れてしまった。
しかし臼田くんにそんな出来事は関係ない。自分は自分、他人は他人だと言わんばかりに我が道を行っている。
今だって外を見ながら呑気にご飯の話をしているし…

「白米を美味しく炊けるようになりたいです!」

しかも目をギラギラと目を輝かせて意気込んでいるし。主婦かよ。
白米のことよりも、私的には楽しく青春っぽい話をしたい。
同じクラスではあるけれど、男子サイドの話を今まで彼の口から聞いたことがない。聞かれたことすらない。
臼田くんは学校生活に興味がないのだろうか?我が道を行く人だからありえないこともないけれど…

「根津さん?」
「うわっ!」

夢中になって彼の生態を考えていた。そしたら目の前に突然本人の顔が現れて、思わず後退して彼から離れてしまった。
だって吐息が…臼田くんの吐息が鼻をかすったんだ!
驚かずにいられないよ…今電車の中だし。いきなりはよろしくない。

(心臓に悪いよ…)

あっちは悪意とか考えとかなく私に顔を近づけてきたのだろう…私が焦っているのを見てクスクスと笑っているくらいだし?彼が腹黒くて確信犯だったら私は今頃泣いていたかもしれない。

「で、根津さんの家のお米はどこのものなのですか?」
「………」

私が彼に泣かされるのは遠い話のようだけれども。

「気にしたことないよ。ブランドなんて。」
「そうなのですか。じゃあ帰ったら教えてください。」

何故突然米の話になったのかは分からない。しかし楽しそうに笑う顔を見ているとどうでも良くなってしまう。
帰ったら真っ先に米のメーカーを調べよう。そして喜ばれよう。
こっそりガッツポーズをして意気込む私は多分ずれていると思います、うん。けれどそれでも幸せを感じているのだから良いだろうとは思う。