ワンダー、フルカラー


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「もう直あの日がやってくるのか…」

『魔の交差点』と呼ばれる場所がある。
その場所は人があまり通らない。車に乗った人間が駅への近道として良く活用するらしい。私は滅多に使わないから、どうして『魔』という言葉が付くのか知らなかった。
『あの日』までは。

(母さんが死んだ場所…)

たまにやって来ては道の端に花を供える。母さんが倒れていた場所の近くへ花を置いてから、しばらくその横に座って景色を眺めていた。
夕方はここはごくたまに小学生が通り掛かる。車がいないのを良いことに、いきなり飛び出す子もいるから…多分これも『魔』という言葉が付いた理由の1つなのだろうと思われる。
とにかく狭いというのも特徴だ。交差点なのに、何故か人が1箇所に溜まれる場所というものが存在しないし…整備がなっていない。こんな怖い場所で母さんは死んだのだ。

「何してんだよこんなところで。」
「あ、」

物思いに耽っていると、聞き覚えのある声が頭上から降ってくる。

「栗井くん…」

その声の主は栗井くんだった。
栗井くんは笑顔を浮かべると、私の隣へと腰を下ろす。
肩と肩とがぶつかった。

「ここ俺が遅刻しそうになった時に使う近道だぞ?」
「そう…」
「気分を切り替えたい時とかたまに活用します。」
「ふぅん…」

何か…どうでも良い内容にしか聞こえない。リアルにそうなのだけれども。

「私もたまに…気分が乗らない時とかにやって来るんだ。」

栗井くんがやって来ようとする要素がどこいら辺に存在しているのかは分からないけれど、私の場合、ここに来れば母さんを近くに感じられるような気がして…

「じゃあ今気分乗ってないのか?」

彼は伏せ気味だった私の顔を覗き込みながら、私にあまり聞かないで欲しいことを尋ねてくる。
正直あまり言いたくない…栗井くんに言ったら多分嫌な顔をされてしまう。
けれど、今相談出来る相手というのは彼しかいない訳で…

「…時間、ある?」

とにかく家に帰る前に、暗くなった自分を変えたかった。
だから栗井くんに助けを求めた。