ワンダー、フルカラー


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「………」
「………」

電車に乗った後、何を話したら良いのか分からなくなった。
いつもみたいにUFOを探そうか、とか思って窓の外を見てみるけど、隣にいる真夜が窓に映って見えてしまい…さっきの言葉を思い出して、今度は顔がニヤけしてしまう。

『爽ちゃん。』

久し振りだった。彼女が僕のことを名前で、しかも『ちゃん』付けで呼んでくれたことは。
小学生から中学生の間の僕らのあだ名は誰もが知る調味料の名前で、真夜はそう呼ばれる度に顔を真っ赤にさせて怒っていた。僕は別に『ウスターソース』と呼ばれたって何とも思わなかったけれど、真夜は『マヨネーズ』と呼ばれる度に傷付いていて…悪意のある人間に呼ばれると尚更辛いようで、常に泣いているように見えた。
見ていられなかった。真夜が悲しむところとか見ていたくなかった。それだけだった。打開策を練って真夜の涙が止まればと思って、もしもまた、それでも真夜が涙を流すようになったら拭いてあげられるようにって思って、僕は常に真夜と一緒にいる。
互いに苗字呼びになってしまったことはもの凄くショックだったけれど、真夜が良いならそれで良いと、僕は我慢をした。
彼女の役に立てられるのなら、嬉しかったから…

「今日は夕飯どっかで食べよっか。」

僕の顔を見上げながら、真夜は笑顔で僕に言った。

「じゃあ回転寿「却下。」

ふざけて言えばピシャリと断られる。『冗談です』と言えば『知ってるよ』と言葉を返して笑ってくれる。
僕の冗談を理解してくれるのは真夜しかいないから、僕は安心して真夜と一緒にいられる。
安心して素も見せられるから、彼女の存在は心地が良い。

「では駅前のファミリーレストランで良いです。」
「分かった。」
「…デザートは別腹ですか?」
「別腹であり自腹ね?」
「…はい。」

…たまにケチだけれども。そこに関しては仕方がないことだから触れない。