ワンダー、フルカラー

「はぁ…これでしばらく日直とはおさらばです。」

職員室へ行って臼田くんに日誌を担任へと提出させて、私達は学校から出ると使い慣れた道を歩いて駅へと向かう。
駅は歩いて大体10分な場所にある。結構距離は短い。

「今日は駅前の本屋に寄り道したいです。欲しい雑誌の発売日なので…」
「欲しい雑誌?」
「はい。実はコラムに載っていた懸賞に応募しまして。」

彼の読む雑誌の大半は、年寄りの方々が読むような旅行雑誌だ。多分その懸賞の内容はご当地グルメとか旅行券とかそんなところだろう。
当たった例はないみたいだけど楽しいからそれで良いらしい。はがきと切手代が勿体無いと言ったら逆ギレされながら言われた。『たったの50円でとんでもないものが当たるかもしれないじゃないですか!』と。とんでもないのはアンタの頭だって言ってやりたいのを堪えた私は偉い。

「今回は温泉旅行です。当たったらおじいさんとおばあさんにプレゼントしたいのです。」

嬉しそうにそう言いながら、彼は頬を紅く染めて照れ笑いを浮かべる。
そんな彼を見ているとこっちまで照れそうになってしまう…思わず目を反らしたのは言うまでもない。
因みに臼田くんはおじいさんとおばあさんの家に住んでいる。ご両親は外国で働いているらしく、滅多に日本には帰って来ない。臼田くんの敬語癖は彼のおじいさんの癖が移ったせいだ、と彼のおばあさんが語っていて、決してこの敬語は他人行儀でやっている事ではないらしい。

「あ、根津さん。」
「ん?」

もう直駅前の本屋に到着するという時に臼田くんに突然呼び止められて、私は立ち止まると少し後にいる臼田くんへと振り返る。

「見てくださいこの地面のシミ。」

まずシミを見てくれって言われた瞬間に彼がくだらないことを言い出すことは分かっていた。
しかし楽しそうに言ってくれるから、ついつい気になってしまい、私は彼の近くへとやって来る。

「どのシミ?」

昨日雨が降ったから…日陰になっている場所にはまだ水溜りの跡が残っている。
そんなシミ達を見詰めながら、臼田くんはそのうちの一つを指で差して、楽しそうに微笑みながら教えてくれた。