ワンダー、フルカラー

「…ついにこの時が来てしまったのですか。」

臼田(どうでも良いから苗字呼び)は溜め息を吐くと、俺のことをジッと見て。

「仕方がないですね。ぴょろ次郎、連れて来ます。」

更に深く溜め息を吐いてから、横にあった階段を上っていった。
って、仕方がないってなんだよ。仕方がなくないだろ。ぴょろ次郎とかいうインコが俺のハヤブサだったらどうしてくれるんだ。

「ごめんね栗井くん。臼田くんってちょっと変わっているからさ…」
「だろうな…」

まるで自分の事のように申し訳なさそうに謝ってくる真夜子には、少しだけ同情をする。
そして、臼田の変人さというのは臼田のネーミングセンスが全てを物語っている気がしてならない。
っていうか『ちょっと』なのか?変わっているのって本当に『ちょっと』なのか?

「とりあえず玄関じゃなくて家に上がれや。真夜子は茶を持ってこい。」
「いや、別に何もいらないって…」
「いやいや、折角来たんだしお茶ぐらいは…」

そんなこんなで、俺は根津の家の玄関より中へと入る。
真夜子の姿が奥へと消えると、案内をしてくれていた根津に肩を掴まれて、話し掛けられた。

「どうだ?うちの真夜子。」

率直すぎないかその質問は。

「まぁ…お前に全く似てないから可愛いわ。」
「だろー?かみさんにそっくりでさぁ!」

…かみさん?

「そう言えば…その奥さんは?」

家の中に上がったばかりだからだろうけど、1度も奥さんと呼べるような人には出会っていない。
根津に尋ねてみたところ、奴は突然何も喋らなくなって、俺の肩から手を離す。

「…根津?」

急に煩い奴が静かになるものだから、正直気持ち悪かった。
後ろに振り返って根津を見てみると、根津は眉を寄せて笑う。

「死んだ。」
「は?」
「10年前にな。」

一瞬冗談かと思った。だけど珍しく根津が落ち込んでいるような顔をしているから…嘘ではなくて本当の話らしい。
初めて根津に罪悪感を抱いた気がする…

「…まぁ、今はそれよりもインコだろ?リビング行こうぜリビング。」
「お、おいいきなり押すなよ!」

その後、背中を押されながら俺はリビングへと通される。
根津に禁句なら真夜子にもこの話は禁句だ。覚えておかなくては。