ワンダー、フルカラー

「…さて、」

臼田くんは私に原点された後はおとなしく黒板の文字を消し続け、終わったら教卓の上にある学級日誌をちょろちょろと書き足し始める。

(黙っていればカッコいいよなぁ…)

臼田くんは性格はあれだけど、容姿は息を呑むほどの美人さんだ。
女顔ではあるが、声を出せばちゃんと男の人の声をしているから間違えられることはない。名前も男だから、間違える人間なんて少数しかいないだろう。

「…どうかしましたか?」

臼田くんの顔をジッと見ていたら本人に気付かれてしまい、私は笑顔で首を横に振って何でもないことを彼に伝える。

「そうですか…」

何故か残念そうにそう言われ、1回『お前がどうした』ってツッコもうかと思ったけれど、すぐに日誌に集中してしまったので中断させるのも悪いと思ったから、敢えて触れずに抱いた疑問をスルーさせた。
大したことではないだろう。鼻歌を歌いながら日誌を書いているくらいだし。

「カラオケに行きたいです。」

頭の中はお花畑みたいだし?

「根津さん、次の休みはカラオケに行きましょう。」
「え?臼田くん奢ってくれるの?」
「じゃあ1人で行ってきます。」
「行ってあげるから黒板から手を離してください。」

臼田くんのくせに私を脅すなんて…しかも笑顔で?笑顔で不協和音攻撃?殺傷能力が半端なさそうだぞ。

「流石根津さん!ノリが良い!」
「う…」

しかし決して『アンタが脅すから』とか、間違えてでも文句は言えない…臼田くん本当に嬉しそうなのだもの。
頬を紅く染めながら、子供のように無邪気に笑う彼は魅力的なのだ。そして私はそんな彼のことが、

「根津さんがお友達で良かったです。」

大好きだ。私は彼に恋をしている。