臼田くんと私は小学1年生の頃からの付き合いで、学校から帰って来てからよく外で遊んだ仲なのだけれど…何故かお互いのことを下の名前では呼ばずに苗字で呼び合う不思議な関係でいる。が、しかしそこにはちゃんとした理由が存在しており、我々は一致団結をして自分達の平穏な暮らしを守っているのだ。
簡単に言えば、というよりこれが理由なのだけれど、我々の下の名前には『ソース』と『マヨ』が入っている。苗字で呼び合うことで周りにそれらがバレることを防ごうという作戦なのだ。

「日直ってめんどくさいです…特に黒板を消すという行為。間違えて爪を立ててしまうと不協和音が耳を襲う。」

そんなことを言いながら爪を早速立てて不協和音を出す臼田くんは恐ろしい。私の鼓膜が破けそう。

「間違えて爪を立てないでよおおお!!」

咄嗟に彼の手を掴んで、音の発信源を止める私。臼田くんはきょとんとした顔で私にとんでもないことを仰った。

「間違えてませんよ。口にしてみたらやりたくなって、それから本能の赴くままにやったので寧ろ正解です。」
「やっちゃったね臼田くん。それ引っ掛け問題だよ。よって丸は取り消します。」
「後悔はしてません。」

意味の分からない臼田くんの回答と、それにツッコむ私の厳しい採点。そんなやり取りはいつものことなので、私達は気にしたことがない。
しかしクラスメートの人間にはそのやり取りが不思議に見えるらしく…ボケ担当の臼田くんには『宇宙人』というあだ名と称号が与えられた。一緒にいる私にはあだ名は存在しないが、『苦労人』という称号を担任の先生より与えられている。
お陰で皆さん優しいです。いつも温かい目でこちらを見てくださいます。