ワンダー、フルカラー

洗濯物をたたみ終えて、余った時間で父さんのクローゼットから穴あき靴下の発掘作業へと取り掛かろうとしていたら、玄関のチャイムが元気良く鳴り響く。

「来た!」

きっと臼田くんだ!早く扉を開けに行かないと!
私は父さんの靴下達を放置して、失礼がないようにと急ぎ気味で玄関へと向かう。
父さんの部屋は一階と二階の両方にあるけれど、着替えを置いているのは寝室として使っている一階…だから階段で転ぶとかいう心配はない。転げ落ちる心配というのもない。
…昔はよく仕出かしていたから心配をしてしまうのです、すみません。やんちゃのし過ぎで階段を鼻血でカラフルにしてしまった記憶があります。お陰で血痕が落ちずに残っている…ということはないのでご安心を。

「遅かったね。」

扉にある小さなのぞき穴から顔を確認したらやっぱり臼田くんがいた。

「すみません。」

臼田くんは申し訳なさそうに頭を下げて、私の家の中へと入る。
別に怒っているわけではないのだけれど…彼は怯えた子犬のような目をして私を見ていて。そこで何かがおかしいと感じた。

「…何かあった?」

扉を閉めて、そこに寄り掛かりながら彼に理由を訊ねてみる。
しかしやっぱり何かあったのか、臼田くんは子犬のような瞳のまま質問をした私のことを見詰めていた。
女の子っぽい顔だけれど、表情に影があるせいか男と言い張れるような顔になっている。今までこんな臼田くんを見たことがあっただろうか?

「実は…」

下に目線を落とし、顔を隠しながら臼田くんはゆっくりと口を開く。
それは私にとってはどうでも良いことだった。

「先ほど買った旅行雑誌の懸賞、僕の名前が載っていなかったのです…」
「そ、そうなんだ…?」

拍子抜けのあまりに一瞬ずっこけそうになってしまったけれど、そこは堪えて私は平然を装う。
雑誌の懸賞に名前が載っていないだけでここまで気分を落とせる人…っていうか泣きそうになる人を初めて見たのですが。どれだけ楽しみにしていたんだ、臼田くん。

(そういえばおじいさんとおばあさんにプレゼントしたいって言っていたっけ…)

あれだ。臼田くんはおじいさんとおばあさんにプレゼントが出来なくなってしまったことに嘆いているのだ。きっとそうに違いない。