ワンダー、フルカラー

(臼田くんがうちに寄るのってそれが理由か…)

父さんは全く答えてくれなかったがその確率が高いのは確かだ。用もなく来る訳がないのだからきっとそう。
しかしなぁ…暇だと言っていたのが気に掛かる。どういうことだろう?

(まぁ良いや。)

細かいことは気にしない。とりあえず臼田くんが来る前に洗濯物を取り込まないと。
そう思って、自分の部屋へ行く前にさっき父親が出てきたリビングへと寄り道をする私。
これをしたくて二階にある私の部屋より先に一階の廊下を歩いていたんだ。

「ただいま母さん。」

死んでしまった母さんが写っている写真に挨拶をしたくて。

(もう十年も経ってるのか…)

母さんが死んだ時、私はまだ小学1年生で幼かった。その日は初めての授業参観日で、良いところを見せるのだと朝から気合いを入れていたことを覚えている。
しかし母さんはその日、私の教室には現れてくれなくて。授業が終わってから父さんが神妙な顔をしながら迎えに来て、何故か車で病院へと連れて行かれた。
そして、病室に入れられて見せられたその光景に、幼い私は固まった。
私の授業参観に行く途中で車に撥ねられてしまったらしい。即死だったと少しばかり大きくなってから聞かされた。
あの日授業参観さえなければ、私がお知らせのプリントを渡し忘れてさえいれば、母さんは生きていられた。死なずに済んだ。
父さんがいない時に何回自分という存在を傷付けてきただろうか。

(洗濯物めんどくさい…)

しかしそれはもう昔のこと。母さんが死んでしまったことは運命だったと思い込むことで、私は最悪の事態を免れた。
母さんが生んでくれたこの体を傷つけて良い訳がない。真夜子という存在は母さんの分身なのだから、子供なのだから、母さんの分も人生を真っ当しなければならないし、楽しまないとならない。それが私の生きる意味。
…これって実は父さんが格好つけて私に言ってくれた言葉なのだけれども。だから父さんも自分が面白いと思ったことは率先して実行に移すのだ。さっき言っていたお楽しみ会のように。
自分の付けた傷を私は一切父さんに見せたことはない。けれど流石教師…子供の異変を察知するのがとにかく早い。だから的確な言葉をいつも私にくれるのだ。お陰で救われました。
今はいい加減だし残念な父親だけれども、私は父さんのことが大好きだし尊敬をしている。酔っ払いだけど、まずまず尊敬はしている。