入学式をすっぽかしたあの日、公園を出たのは夕方だった。
家に帰ると、父さんが仕事を切り上げて帰ってきていた。


いつから待っていたのか、父さんは家の外、玄関の前に仁王立ちして立っていた。

「春登、おかえり。」
「・・・ただいま。」

なんとなく、父さんの顔が見れなくて、うつむいたまま家に入ろうとした。
そのときだった。
左の頬に、強い衝撃がはしり、僕は地面にしりもちをついていた。

「・・・ってぇ。」

父さんに殴られたのだと理解する前に、俺を見下ろした父さんが叫んだ。

「ばかやろう!!」

怒鳴り声に、顔を上げると、父さんの顔は真っ赤だった。

「・・・ごめん。」

とんでもない親不孝者だと、自分でも分かっていた。
母さんは、俺の決断を受け入れてくれたけど、その母さんですらきっと、本心は泣きたい気分だろう。
必死で育てた一人息子が、入学式にも出ず、高校をやめたのだから。

「ごめん父さん。でも、俺高校はいかないから。
 俺、耐えられないんだ。自分に嘘ついて、我慢して生きていく事なんて・・・
 だから・・・」

「春登。」

父さんが、俺の言葉をさえぎって声をあげた。
自分の意見すら、聞いてもらえないのかと、涙がこぼれそうになった。