教授との融点

どうして…。


わからないよ…。


圭吾を吹っ切ったばかり、中村くんにキスされたばかり。


なのに欲しいのは。


初瀬尾教授の手とか声とかで。


どうして甘えてしまうんだろう。


教授はどうして拒まないんだろう。


どうして?とか、なんで?ばかりがループする。


なのに離れられない。


この匂いは、このぬくもりは、今のあたしには必要で。


体の震えを抑えながら、必死に教授にしがみつくと強く抱き締めてくれた。


すごく居心地のいい胸に身をまかせる。


少し見上げると、茶色がかった教授の瞳が優しく降っていた。


見つめ合ったまま動きたくない。


味わった事のない胸の高鳴りを破ったのは、スズメのヒナの鳴き声だった。