教授との融点

すでに車は待っていて、教授は運転席越しに助手席のドアを開けてくれる。


けど。


なんとなく助手席に乗るのがためらわれた。


「どうした?乗って?」


「あ…。ハイ」


学校の外で教授と2人は初めてで、なんか私服同士、教授の車の中は緊張する。


ヒナを持ってせいで、シートベルトもうまくつけられない。


「どうした?」


「あの…スイマセン。シートベルトが…」


「何持ってんの?」


「えっと、そこの芝生で見つけちゃって…。鳥のヒナ…」


「ふーん。じゃ、オレがシートベルトつけるけど、いい?」


「あ…。お願いします」


初瀬尾教授の手が伸びてあたしの顔を横切る。


その手が華奢なくせにゴツくて、思わず反応してしまう。


圭吾じゃないのにドキドキするのは…きっと気のせい。


圭吾以外の男の人に慣れてない、それだけだよ…ね?


教授が車を走らせると、速度と一緒にあたしの心拍数も上がった。


どうしよう…。


チラッと隣を見ると視線が絡まった。