「予感はするものの、…邪魔者が入らなければいいんだがな――――」
邪魔者が入ってしまえば、月詠が今宵盗もうとしているモノが手に入らなくなる可能性が十分に高まる。
警察ならまだ良いものの、また別の何かに邪魔をされては大怪盗としてのプライドが傷つく。
「まぁ…」
衣装の中に忍び持っていた黒い“何か”を取り出し、指に掛ける。
するとカチャ…という安全とは言えない音が裏路地に響いた。
邪魔者ならば容赦はしない…。
「この手で、奪い取るだけだ。――――相手が何であろうとも」
黒い衣装に全身を包んだ月詠の肩に、一匹の白い鳥が止まる。
月詠はフッと微笑み、鳥の首から盗聴器を外した。
雑音が多い盗聴器から、神経を耳に集中させる。
