+月詠+
「今日も楽しませてくれよ―――?」
暗闇の中でニヤリと微笑する姿は何とも不気味な雰囲気を放ち、見ている人を恐怖に至らしめる。
漆黒の闇に覆われた空を飛び、堂々とした大怪盗。
――――今日の獲物は結構な価値があるモンだからな…。
サツも警備に力、入れてやがる…。
チッ…と静かに舌打ちをし、しかしながら月詠の顔は余裕が滲み出ていた。
「…お?」
除く窓の隙間から見えた人影、それは月詠にとってライバルにあたる人物のモノだった。
―――日向 零。
若くして警察巡査長に就任した秀才。
月詠が絡む事件は必ず、といっていいほど見掛ける姿だ。
「これだけ楽しませて貰うの、初めてかもな…」
黒い衣装の内側からキラリと光るトランプのようなカードを取り出し、スパッと綺麗に隙間に入った。
「成功の予感だな――…」
クス…と妖しい笑みを浮かべ、人気のない裏路地に身体を進めていく。
