「この星マークは、俺と親父の暗号だったんだ。ガキの頃からずっと、二人だけで通じる秘密の暗号」

三人は困惑した様子で、俺の次の言葉を待っている。

「星の意味は……コレに注意せよ」

それだけ言うと、鋭い視線を柏木瑞穂に向けた。

「親父は自殺なんかしない。誰かに殺されたんだ。その鍵を、柏木瑞穂……アンタが握っている」

俺のその言葉に柏木瑞穂は大きく目を見開いて、首を横に振った。

「私は……何も知らない」

彼女は震える声でそう答えると、黒い円らな瞳からポロポロと涙を零した。

その姿を見て……小さく胸が痛む。

「今回の事件と俺の親父の事が関係あるのかは分からない。でもアンタはそのどちらの事件にも関係している」

俺の言葉に彼女はまた「何も分からない」と擦れた声で答えると、両手で顔を覆ったまま声を殺して泣き続けた。

「アンタの理由は分かった。……でも今日は帰ってくれ。また、連絡するから」

そう言ってイケメン青年が俺の手から名刺を引っ手繰ると、泣き崩れる彼女をそっと抱きしめた。

「……分かった」

青年に小さく頷いて返すと、そのまま背を向けて大通りへと歩き出す。

……泣かせるつもりは……無かったんだけどな。

チラッと振り向き泣き続ける彼女に心の中で弁解すると、そのまま人の波の中を泳いで行った。