《泣かないで瑞穂。君を悲しませる全てのモノを僕が消してあげるから》
その赤い文字だけが不気味に存在している。
……なに?誰かのイタズラ?
全身に暑くて掻くのとは違う、冷たい汗が滲んでいく。
同じ様に手帳を覗いている二人も、あまりの事に唖然としていた。
もう一度視線を手帳に移すと、その文字が書かれている場所は……母と長谷川さんが死んだ日のページだと気付いた。
ドクン、ドクンと心臓が大きな鼓動を打ち、呼吸が徐々に速くなる。
……一体、誰が。……犯人?
自分を落ち着かせるように、ギュッと胸元の服を握り締める。
……でも……でも待って。
……この手帳はずっと私が持っていたのに。
……お母さんが死んだ日にだって、学校で確認した時には……
瞬く間に、様々な考えが頭を巡る。
……何も書いてなかった。
……それならいつ?どこで?
……お母さんの死体を見つけた時に鞄を置いて家を出た。
……それよりも後に手帳にこれは書かれたはず。
……その時犯人はまだ家に居たの?
……でもどうして?
……一体、何の為に?
……誰が?
……あの灰色の男?
……それとも別の誰かなの?
……分らない。



