カランと小さなベルを鳴らせてドアを開くと、冷たく心地よい風が吹き抜けた。
「いらっしゃいませ」
店に足を踏み入れると同時に、店の奥から声が掛かる。
女の店員さんに案内され、大きなガラス窓沿いの席に着くと崩れる様に椅子に座った。
「私、コーラ」
メニューを手にした綾子が即座に注文を決める。
「瑞穂、何にする?アイスココア?」
彼の問いかけにコクンと頷いて返すと、彼が小さく手を上げ店員さんを呼んだ。
「コーラとアイスココア……それとホットコーヒーで」
注文を取った店員さんが席から離れると、綾子が訝しげな視線を彼に送っている。
「この暑い日に……ホットコーヒー?修司さんてほんとに変わってるよね」
綾子は不思議そうに首を傾げながら、私に同意を求めてくる。
「そうかもね」
そう言って笑みを返すと、彼が困った様に眉を顰めた。
「別にいいだろ?温かい物が好きなんだよ」
彼はそう言うと少し拗ねたように顔を背け、私と綾子はそれを見てクスクスと笑った。
それからすぐに飲み物がテーブルに並び、三人で他愛も無い話をして笑い合った。