「……誠君」
そう小さく彼を呼ぶと、クスクスと笑い続ける皆の視線が私に向けられた。
「少し……話したい事があるの」
そう言って真っ直ぐに彼を見つめると、彼は少し驚いた様に目を丸くして……それからコクリと頷いた。
その様子を見ていた皆は、何も言わないまま静かに部屋から出て行く。
シンと静まり返った病室に、私と彼……そして小さな赤ん坊の吐息だけが聞こえる。
急に変わった重苦しい空気に、微かに唇を噛み締めたまま俯く。
何を……言おうとしていたのだろうか。
……何か言わなくてはいけない。
私の心は必死にそう訴えるが、小さく開かれた口からは言葉が出て来ない。
そんな私の様子を彼は何も言わないまま静かに見つめている。
「……あ、あのね」
「親父の事……だろ?」
思い切って声を出した私を遮り、彼はそう言ってクスリと笑った。
その彼の言葉に大きく目を見開くと……それから小さく頷いて答える。



