「おめでとう……瑞穂ちゃん。これ、僕と綾子から」
そう言って近藤さんは綺麗な花束を小さく掲げると、それをテーブルの上に置く。
「それからこっちは……古川さんから」
そう言って少し可笑しそうに笑って見せた近藤さんの腕には……可愛いキツネのぬいぐるみが抱かれている。
首元にプレゼント様の真っ赤なリボンが巻かれたそのキツネのぬいぐるみは、円らな黒い瞳で私を見つめていた。
皆の視線がキツネのぬいぐるみに向けられ、それから病室に一瞬の静寂が広がる。
しかしそれはすぐに崩れ……クスクスと皆の口から吐息が漏れ出した。
「あのオッサンがぬいぐるみ!?似合わねェな!!どんな顔して買いに行ったんだよ!!」
可愛いキツネのぬいぐるみを見て、誠君はケラケラとお腹を抱えて笑う。
「買いに行くのに付き合わされたんだけどさ、恥ずかしいのか店の前をうろうろしててさ……僕も一緒に職質受ける羽目になったんだよ?警察官なのに」
そう言って近藤さんは困った様に笑うと、おどけた様に肩を竦めて見せた。
不意に彼の左手へと視線を落とすと、彼の薬指に光る指輪が目に留まる。



