「……私の……赤ちゃん」
愛しい我が子を見つめたまま小さく呟くと、ポロポロと涙が頬を伝った。
「凄いよ瑞穂。本当に凄い。凄く頑張った。えらい!瑞穂は凄い!!」
彼は少し興奮した様にそう繰り返しながら、私の頭をぐりぐりと撫で回す。
「修ちゃん……生まれたよ」
「うん」
「私……お母さんになった」
「うん」
「私……わたし……」
「……うん」
涙を流したままそう声を震わせると、修ちゃんは何度も繰り返し頷いて答え続ける。
「私達……《家族》になれたのかな」
その私の言葉に彼は少し色素の薄い瞳を揺らすと、それから深く頷いた。
「うん。俺達……《家族》になれた」
そう言ってニッコリと笑った彼の頬を、音も無く涙を伝って行く。
彼がそっと指を差し出すと、その指を小さな手がキュッと握り締める。
それに彼は嬉しそうに……そして少しだけ切なそうに笑みを浮かべると、ボロボロと涙を零してそっと私を抱き締めた。
彼は微かに体を震わせながら私を強く抱き締める。
「……ありがとう。ありがとう……瑞穂」
そう彼は繰り返し呟きながら、まるで小さな子供の様に泣き続けた。
「もう。お父さんになったんだから……あんまり泣いてちゃダメでしょ」
そう言って涙を流したままクスリと笑って見せると、彼は慌ててゴシゴシと涙を腕で拭い、それから照れた様に笑みを浮かべて見せた。
しかし未だ彼の瞳からは大粒の涙が零れ落ちている。
その彼の涙を見て……思った。
それは今までに私が繰り返し見て来た悲しい涙とは違い、この世の何よりも綺麗で……美しい涙だと。



