「おやおや……こんな所で君に会えるとは思わなかった」

急に聞こえた声の方へとそっと視線を移すと、そこには……一人の男が座っていた。

黒く勝気な瞳に、少し伸びた無精ひげ。

それから口元に浮かぶ……不敵な笑み。

その男は私の隣に座っていて、ニヤリと不敵な笑みを浮かべたまま私を見つめている。

突然その場に現れた男の存在に、ただ茫然と男を見つめ続ける。

「それで君はこんな場所で何をしているのかな?」

「……分からない。気が付いたら……ココに居たの」

男の問いに小さく答えると、男は困った様に笑ってコクリと頷いた。

「貴方は……私を知っているの?」

その私の問いに男は腕を組むと、《う~ん》と唸りながら考える様に首を傾げる。

「知ってるけど……知らないかな?」

その男の意味不明な答えに眉を顰めると、男はまた困った様に笑って頷いて見せた。

「俺が知っているのは……まだ小学生だった頃の君だけだ。それがこんな美しい女性に育ったなんて……オジサン、ドキドキしちゃうよ」

男はそう言っておどけた様に肩を竦めて見せると、ニヤリとお得意の笑みを浮かべる。

「そんな君には……この場は似合わないな」

男は急に真剣な顔をしてそう呟くと、真っ直ぐに私を見つめた。

まるで全てを見透かされてしまうかの様な不思議な瞳に、思わずグッと息を呑む。