「う~ん。たいした証言は取れませんでしたね」

車を運転する近藤は、無駄足だったと感じたのか小さな溜息を吐いた。

「そう言うな。刑事は歩き回ってなんぼだろう?」

そう言って少し汗ばんだシャツの胸ポケットからタバコを一本取り出し、百円ライターで火を点ける。

「……ちょっと古川さん。いい加減タバコ止めたらどうですか?そのうち本当に肺がんにでもなりますよ!」

自称健康オタクの近藤はタバコが嫌いな様で、険しい顔をしてこちらを睨んでいる。

「同じ車に乗ってる俺だって副流煙吸ってんですからね。……だいたい最近は分煙だって進んでるのに……」

運転しながらブツブツと小言を垂れる近藤に適当に相槌を打ちながら、『不便な世の中になったな』とつくづく思った。

近藤の小言を流しながら、助手席の窓からそっと空を見上げる。

窓の外には雲一つ無い青空が広がり、眩しい太陽が燦々と光っていた。

まだ午前中だと言うのに、冷房をガンガンにかけても生温い温風をかき回すだけで、車内は蒸し暑く額にはじんわりと汗が滲む。

……あの日も……こんな天気だったな。

眩し過ぎる太陽を目を細めて見つめたまま……あの『少女』と初めて出会った時を思い出していた。