「……レン」

急に聞こえた声に、ビクリと身を竦めた。

そっと辺りを見回すと、どこまでも果てしない白い空間が見える。

……僕は……何をしていたんだっけ。

記憶が混濁し、状況が理解できなかった。

……そうだ……僕は……鈴村誠を……

そんな事を思い出した次の瞬間、目の前のあり得ないモノにゴクリと息を呑んだ。

漆黒の髪を微かに靡かせ、優しくどこか儚い笑みを浮かべる彼女を……僕は知っている。