「僕ですら瑞穂を守りきれないのに。おじさんにはそれが出来るの?救うって何から?瑞穂の母親から?父親を殺した罪から?おじさんが助けてくれるの?」

怒涛の様に少女の口から飛び出す言葉に、ただ茫然と立ち尽くした。

「簡単に言わないでよ!!誰にも救えるわけないんだ!!お前達みたいに……汚い大人なんかに!!」

少女は感情的にそれだけ叫ぶと勢いよく身を翻し、自分の家へと向かって走って行ってしまった。

遠くなっていく赤いランドセルを見つめたまま、額に滲み出した汗を腕で拭う。

……『僕』……彼女は確かにそう言った。

「……『君』は……誰なんだ?」

そう小さく呟くと、まるで『あの子』の心が流す涙の様に……冷たい雨が降り始めた。