「柏木……瑞穂さんだね?僕は近藤健一(コンドウ ケンイチ)、こちらは僕の先輩の古川義之(フルカワ ヨシユキ)です。辛いと思うけど……少しお話を聞かせてくれるかな」

そう言って声を掛けると、制服姿の少女がそっと顔を上げた。

可愛らしいクリっとした瞳が泣いているせいか赤く腫れてしまっている。

「瑞穂……話せる?」

隣に座る少女が問い掛けると、瑞穂さんは小さく頷いて自分の腕で溢れる涙を拭った。

「無理はしなくていいんだよ」

そう言って青年が瑞穂さんの頭を優しく撫でる。

「……失礼ですけど……君は?」

その問いかけに青年が自己紹介をしてくれた。

「俺は……霧島修司(キリシマ シュウジ)です」

彼はこの辺では有名な大学に通っている秀才で、彼女とは三年も付き合っているらしい。

……学生恋愛で三年はとても長いと思う。

……俺が学生の頃なんて、半年ももてば長い方だったのに。

まぁ、そんな話は置いといて……彼がいつもの様に彼女の携帯に電話をかけると、彼女が泣きながら事件の事を説明したそうだ。

彼はすぐにこのアパートを飛び出し、彼女を保護した鈴木さんの所まで迎えに行った。

いつまでも鈴木さんの所に居る訳にもいかずに、とりあえず彼の家に連れて行く事になったらしい。

その途中、騒ぎを聞き付けた親友の楠綾子(クスノキ アヤコ)さんと会ったと言う事だ。