俺にとって彼女の存在は、この世界の全てだった。
あの悪夢の様な日々を越えられたのは、彼女が傍に居てくれたからだ。
いつも声を殺し小さく蹲って泣いている俺に、彼女は優しく手を差し伸べてくれた。
その小さく温かな手を握り締めている間は、少しだけ心が楽になる様な気がした。
……彼女はいつも笑っていた。
まるで辛い事なんか何も知らない様に。
悲しい事なんて何も無かった様に。
彼女の眩しい笑顔だけが俺の狂った世界の唯一の光で、彼女の優しい囁きが俺の悪夢の様な時の唯一の救いだった。
彼女が……そして『彼』が居たから俺は今日まで生きてこれたのかもしれない。



