『修ちゃ~ん!』

その声と共に彼女が眩しい笑みを浮かべて走ってくる。

その笑顔は俺の凍っていた心を一瞬で溶かし、胸の奥に温かな何かを浮かび上がらせた。

《柏木瑞穂》……それが彼女の本名だ。

昔の俺が呼んでいた名前は、恐らく彼女にとって忌まわしい名前なのだろう。

しかしその名前には……もっと深い意味がある。

彼女は俺に走り寄ると、バフッと勢いよく俺の胸に飛び込んできた。

そっと彼女を抱き締め、彼女の黒くサラサラの髪を優しく撫でる。

……可愛い瑞穂。

彼女の温もりを感じたまま、そっと目を閉じる。