「……レン」

震える声を絞り出し、彼の名を呼ぶと、彼は困惑した様に瞳を揺らして俺を見つめる。

その瞳はかつての俺があの忌まわしいビルで見た《あの子》の瞳と同じで、その瞳は深い罪に怯える様に悲しく揺らぎ続ける。

「君は変わらないね……《あの時》と……一緒だ」

そう言ってニヤリと笑うと、背中越しの彼女の温もりを感じたまま……どこまでも深い闇の中へと呑まれていった。