僕はいつでもキミの傍に


「瑞穂は全部忘れてました。辛い過去の事も、俺の事も……全部忘れてしまっていて。……でも彼女は俺の心の支えだった。辛く気の狂いそうなあの歪んだ時間も、彼女が居てくれたから耐える事が出来た。彼女がいつも優しく笑って、俺の傍に居てくれたから……だから……俺は……」

彼は声を詰まらせ、強く唇を噛み締める。

「……あいつは何も知らないんです。……せっかく忘れられたのに……また……思い出させるなんて……そんな事……」

声を震わせる彼の頬を、静かに透明な雫が伝い落ちる。

それは灰色の机の上にポトポトと落ち、悲しい水溜りを作った。

その雫はそこにいた全ての者の胸を痛いくらいに締め付ける。

刑事として有るまじき考えだが……俺には彼の気持ちが分かる気がした。

……この世は不条理で溢れかえっている。

彼の悲しい涙を見つめたまま、そんな事を……ふと思った。