コツコツと靴がコンクリートの地面を叩く音が反響する。 薄暗い寂れた廃ビルの中は荒れ果て、空気すらも淀んでいる気がした。 ……こんな所にノコノコ来るなんて、なんと馬鹿なんだろうか。 心の中でそんな事を思いながら少し自嘲気味に笑うと、ガラスの嵌められていない窓からそっと空を見上げた。 漆黒の空には少し欠けた月が悲しそうに揺らぎ、それは俺の心を酷くざわめかせる。