ボーダー

ぶっ壊してやりたい…

明日香の身体をそっと壁に押し付けて、そのままの体勢で彼女の弾力のある唇を奪う。

浴室なので舌が絡み合う音が響いて、これからの行為への昂りをもたらす。

ひとしきり唇を奪ったあと、ふと明日香の頬に乾ききっていない涙の痕があるということに気付いた。

あれ…?

明日香……もしかしてもしかしなくても、泣いてた?

「明日香のことほっとけない。
なんかあった?
溜め込まないで、俺に話せるなら話して?
いつも言ってるじゃん。」

「うん、ごめん。
徹と室長、それに祖父母のお二人。
彼らを見てると、家族っていいなって、羨ましくなっちゃって。」

「明日香?
俺と二人きりのときに室長の、他の男の名前出したから反則。
悪い子にはお仕置きだね?」

「……あっ……」

まだほんの少し、胸の膨らみとその頂に触れただけなのにこんな甘い声出して……

「先……入りな?
風邪引くよ?明日香。」

オレの言葉に、不満げに頬を膨らませながら、おずおずとお湯に浸かる明日香。

明日香のその顔が見たかった。

可愛すぎ。

明日香の後に浴槽に浸かると、顔に思いきりお湯をかけられた。

「こーいう、人さまの家でラブラブなことするのは人生で初めてだったのに!
徹のバカ!」

言ったな?

「オレにそんな口聞くんだ?
……お仕置き……な?

明日香から誘わないと抱かないよ?
ましてやここではね。
ここじゃ、配慮してあげられない。
用意はしてあるけどカバンの中だし。
明日香は今、仕事が軌道に乗ってるときなのにデキたら困るでしょ?

……仮に、今そうなったとして、明日香が産休で抜けるぶんの穴埋めの采配はオレが考えるんだし。」

「……ケチ。
キツいの、自分じゃないの?」

明日香は、質量を増して主張するオレのをそっと握る。

「っ……!
明日香……やめろ。
そこまでにして?
ほんとに、冗談抜きで今すぐ抱いちゃいそうだから。」

「んー?
抱いてくれるようにわざと触ってるんだもん。
離れちゃうと、こういうこともできなくなっちゃう。
それは嫌なの。
寂しい……」

ちゃぷ、と音を響かせて、オレを抱きしめる明日香。

「明日香、したいなら出よっか?
祖父母は用意がいいからな、オレと明日香の部屋くらいなら用意してそう。
そこなら、ちゃんと着けるもの着けてできる。そのほうが、明日香は安心でしょ?」

「うん。
今はまだ……だけど、仕事が落ち着いた頃に、またこの国で再会できたときに。
その時は、なしがいいな。」

「言ったね?
明日香。……約束。」

明日香の唇に吸い付く。
口内で舌を遊ばせると、ん、と声にならない声が漏れる。
軽く唇を吸ってから離す。

「苦しかった?ごめんね。
続きはこの後、ね?

先に上がるね、明日香。
祖父母に許可とって、用意したいものもあるからさ。
ゆっくりでいいよ?

明日香の裸はもう何度も見てるし、隅々まで知ってる。
鳴き声のトーンも耳が覚えてるから、
いろいろ想像しながら、時間かけないで入れるように準備しておくね?」

「も、徹の変態!」

「んー?
変態なのは明日香の前でだけだよ?」

オレはそう言って明日香の頭を撫でてから浴槽を出て、軽くシャワーを浴びると、バスルームを出た。

着替えは後でいいので、バスローブを羽織ってバスルームを出ると、祖父母にお礼を言う。

「良いお湯でした。」

「あら、良かったわ。」

ジムに行っていた俺の親父と、兄も帰ってきていたようだ。

「ラブラブし足りない、って顔をしてるぞ。
階下にあるレストランの予約は1時間後だ。
それまでにしたいことあるなら済ませろよ。」

祖父が部屋を案内してくれた。

セミダブルベッドに、ベッドサイドテーブルに小さいテーブルがあるだけのシンプルな部屋。

本当に寝るためだけの部屋なのだろう。

そんなことを考えていると、遠慮がちなノックの音が2回響いた。

「……徹?
いるの?
晴恵さんに聞いたら、この部屋だって仰ってたから。
入っていい?」

「明日香?
正解。
良いよ入って。」

おずおずと部屋に入ると、手に持っていた大きなポーチをそっとドアの横にあった小さい丸椅子の上に置く。
ドアを閉めるなり着ていたプリーツワンピースを脱いだ。

どうやら、それしか着ていなかったようだ。

明日香も乗り気だったんじゃん?