それから3日後。
エージェントルームに泊まり込んだ後、早朝の便でマレーシアの首都、クアラルンプールへと飛び立った。
飛び立つ前に、明日香がジュエリーショップを見てはしゃいでいた。
その品番をこっそり、タブレット端末に入力して、エージェントルームの兄貴の端末に送る。
その指輪をどうするか、後は兄貴と話し合えばよい。
日本より1時間遅れているだけで、特に時差ボケ等もなかった。
クアラルンプール国際空港へと到着して空港を出ると、1台の車が止まった。
車から降りてきたのは、室長に似た、少し白髪が生え出した髪の男性。室長に似た筋肉質な身体が特徴的だ。
室長の面影たっぷりな男の人こそ、柏木 康介《かしわぎ こうすけ》。
オレの父親その人だ。
「康一郎か?
久しぶりだな!
何年ぶりだ?
よく来てくれたな!
案内する、乗ってくれ。」
その人は兄さんからオレに視線を移すと、目をしばたたかせた。
「徹、伊達 徹か!?
お前、顔は死んだ真琴にそっくりだ。
久しぶりだな、真琴が亡くなったのはお前が大学に合格してすぐだったな。
大学に合格するやいなや一人暮らしを始めたから、寂しがっていたぞ。
まぁ、よく来てくれたな。
乗りなさい。」
久しぶりすぎて父親の顔を忘れていた。
オレは明日香の手を引いて車に乗せてやる。
「南 明日香といいます。
徹には常日頃から大変お世話になっています。
よろしくお願いいたします。」
車に乗るなり、オレと室長の父親に頭を下げる明日香。
「いいんだよ。
話は康一郎から聞いた。
オレの前妻が、今度は君に迷惑をかけるとは、情けないよ。
何かしら、できることがあったら遠慮なく言ってくれ。
徹をよろしく。
彼とは、俺と、死別した真琴との間に出来た子でね。
真琴は徹が大学に合格したと告げた日の夜に息を引き取った。
まるで、その報告を待っていたみたいに。
徹を、こんな身の上にさせてしまったのも私の責任だ。徹を支えてやってくれ。
おっと、暗い話を失礼。
祖父母はいい人だ。
性格も穏やかだし、どんな人も包み込んでくれる優しい笑顔が特徴的な人だ。
大歓迎だろうよ。
康一郎、お前も彼女の一人や二人、連れて来ればもっと喜んだだろうに。」
「ほっとけ」
そんな会話をしていると、もうすぐ着くぞという声が運転席からした。
「マレーシアのモントキアラ。
日本で言う、白金高輪とかの高級住宅街をイメージしてくれればいい。
こっちでは日本でいうマンションのことをコンドミニアムと言うんだが、その質が、日本といい意味で違うんだ。
楽しみにしているといい。
なにせ、隣に日本の有名ハンバーガーチェーンがあるからな。食事にも困らない。
ジムもプールもある。
最寄り駅まで車で行かなきゃならんから、もちろん駐車場もな。
いい意味で豪華だ。」
駐車場に車が停まると、兄さんが先に降りて、オレと明日香が同時に降りた。
オレの父親が降りるのを見届けてから、彼の案内でコンドミニアム内に入る。
確かに、日本でよく見るMマークの看板を見つけ、あれれ、と思った。
ドアの外装は日本のマンションというより戸建てのようで、開けると申し訳程度の靴を脱ぐスペースと靴を置く棚があった。
靴を脱ぐとすぐにリビングダイニングが広がっていた。
白色が基調のキッチンの横には、飲食店で見るような冷蔵庫が備え付けられていた。
マレーシアの仕様なのだろうか。
リビングダイニングからゆっくりと立ち上がった2人の男女。
「康一郎か。
ずいぶん久しぶりだな。
本当に異母弟を連れてくるとは。
確かに、ウチの息子と、凛々しい目がそっくりだ。
孫に初めましてというのも何だか変だが、初めまして。
そちらの綺麗なお嬢さんは、康一郎じゃない方の孫のお嫁さんかな。
あ、私としたことが、名乗るのを忘れていた。
柏木 孝太郎《かしわぎ こうたろう》という。
よろしく。」
祖父は優しい笑みを浮かべて、ニコニコとオレと明日香を見やった。
明日香は、数秒前まで緊張して頬に力を入れていたが、いつもの笑顔を顔に浮かべている。
「康一郎!
本当に久しぶりね!
何十年ぶりかしら!
急に連絡してきてビックリしたけど、元気そうで良かったわ。」
祖母は兄さんに軽いハグをしてから、オレと明日香に向き直って、笑顔で話しかけてきた。
「あら、あなたたちが私の2人目の孫と、その奥さんね!
初めまして。柏木 晴恵《かしわぎ はるえ》と申します。会えて嬉しいわ。」
軽く会釈をしてから、それぞれの名前を名乗るオレと明日香。
「伊達 徹と申します。
初めまして。貴女にお会いできてとても嬉しいです。」
「初めまして、南 明日香と申します。
貴女の孫の徹さんには常日頃より、大変お世話になってます。
よろしくお願いします。」
優しそうな祖父母で良かったな。
「とにかく、座って?
今、紅茶を持って来させるから。」
晴恵さんはダイニングとソファを手で指し示すと、オレと兄さん、明日香をダイニングの椅子に座らせた。
規則正しいノックの後、メイドさんが、オレらの前に紅茶の入ったカップを置く。
「話は康一郎から聞いた。
そういうことか。
ウチの息子の前妻と、今の明日香ちゃんの母親が同じとは。
私が言うのも何だが、ウチの息子の前妻は性格上、かなり問題があってね。
実際に徹さんと籍を入れたとしても、どうせウチの康介が明日香さんにとって義理の父親になる。
義理の父親が今の母親代わりの人の元旦那だなんて、胸が痛むな。」
「ええ、本当に。
そぉだわ。
…徹。あなたさえ良ければ、こっちに3ヶ月間いなさい。
その間になんとかしてみるわ。
私の知り合いにね、精神科医とカウンセラーの資格を持つ人がいるんだけど、その人なら、明日香ちゃんの血のつながらない母親、つまり継母を"更生"させてあげられるかも。
確証は出来ないけど。
明日香もちゃんも、このままはイヤでしょう?」
不安そうに尋ねる明日香に、優しく声をかける俺のお祖母さん。
明日香の顔にも笑顔が戻った。
エージェントルームに泊まり込んだ後、早朝の便でマレーシアの首都、クアラルンプールへと飛び立った。
飛び立つ前に、明日香がジュエリーショップを見てはしゃいでいた。
その品番をこっそり、タブレット端末に入力して、エージェントルームの兄貴の端末に送る。
その指輪をどうするか、後は兄貴と話し合えばよい。
日本より1時間遅れているだけで、特に時差ボケ等もなかった。
クアラルンプール国際空港へと到着して空港を出ると、1台の車が止まった。
車から降りてきたのは、室長に似た、少し白髪が生え出した髪の男性。室長に似た筋肉質な身体が特徴的だ。
室長の面影たっぷりな男の人こそ、柏木 康介《かしわぎ こうすけ》。
オレの父親その人だ。
「康一郎か?
久しぶりだな!
何年ぶりだ?
よく来てくれたな!
案内する、乗ってくれ。」
その人は兄さんからオレに視線を移すと、目をしばたたかせた。
「徹、伊達 徹か!?
お前、顔は死んだ真琴にそっくりだ。
久しぶりだな、真琴が亡くなったのはお前が大学に合格してすぐだったな。
大学に合格するやいなや一人暮らしを始めたから、寂しがっていたぞ。
まぁ、よく来てくれたな。
乗りなさい。」
久しぶりすぎて父親の顔を忘れていた。
オレは明日香の手を引いて車に乗せてやる。
「南 明日香といいます。
徹には常日頃から大変お世話になっています。
よろしくお願いいたします。」
車に乗るなり、オレと室長の父親に頭を下げる明日香。
「いいんだよ。
話は康一郎から聞いた。
オレの前妻が、今度は君に迷惑をかけるとは、情けないよ。
何かしら、できることがあったら遠慮なく言ってくれ。
徹をよろしく。
彼とは、俺と、死別した真琴との間に出来た子でね。
真琴は徹が大学に合格したと告げた日の夜に息を引き取った。
まるで、その報告を待っていたみたいに。
徹を、こんな身の上にさせてしまったのも私の責任だ。徹を支えてやってくれ。
おっと、暗い話を失礼。
祖父母はいい人だ。
性格も穏やかだし、どんな人も包み込んでくれる優しい笑顔が特徴的な人だ。
大歓迎だろうよ。
康一郎、お前も彼女の一人や二人、連れて来ればもっと喜んだだろうに。」
「ほっとけ」
そんな会話をしていると、もうすぐ着くぞという声が運転席からした。
「マレーシアのモントキアラ。
日本で言う、白金高輪とかの高級住宅街をイメージしてくれればいい。
こっちでは日本でいうマンションのことをコンドミニアムと言うんだが、その質が、日本といい意味で違うんだ。
楽しみにしているといい。
なにせ、隣に日本の有名ハンバーガーチェーンがあるからな。食事にも困らない。
ジムもプールもある。
最寄り駅まで車で行かなきゃならんから、もちろん駐車場もな。
いい意味で豪華だ。」
駐車場に車が停まると、兄さんが先に降りて、オレと明日香が同時に降りた。
オレの父親が降りるのを見届けてから、彼の案内でコンドミニアム内に入る。
確かに、日本でよく見るMマークの看板を見つけ、あれれ、と思った。
ドアの外装は日本のマンションというより戸建てのようで、開けると申し訳程度の靴を脱ぐスペースと靴を置く棚があった。
靴を脱ぐとすぐにリビングダイニングが広がっていた。
白色が基調のキッチンの横には、飲食店で見るような冷蔵庫が備え付けられていた。
マレーシアの仕様なのだろうか。
リビングダイニングからゆっくりと立ち上がった2人の男女。
「康一郎か。
ずいぶん久しぶりだな。
本当に異母弟を連れてくるとは。
確かに、ウチの息子と、凛々しい目がそっくりだ。
孫に初めましてというのも何だか変だが、初めまして。
そちらの綺麗なお嬢さんは、康一郎じゃない方の孫のお嫁さんかな。
あ、私としたことが、名乗るのを忘れていた。
柏木 孝太郎《かしわぎ こうたろう》という。
よろしく。」
祖父は優しい笑みを浮かべて、ニコニコとオレと明日香を見やった。
明日香は、数秒前まで緊張して頬に力を入れていたが、いつもの笑顔を顔に浮かべている。
「康一郎!
本当に久しぶりね!
何十年ぶりかしら!
急に連絡してきてビックリしたけど、元気そうで良かったわ。」
祖母は兄さんに軽いハグをしてから、オレと明日香に向き直って、笑顔で話しかけてきた。
「あら、あなたたちが私の2人目の孫と、その奥さんね!
初めまして。柏木 晴恵《かしわぎ はるえ》と申します。会えて嬉しいわ。」
軽く会釈をしてから、それぞれの名前を名乗るオレと明日香。
「伊達 徹と申します。
初めまして。貴女にお会いできてとても嬉しいです。」
「初めまして、南 明日香と申します。
貴女の孫の徹さんには常日頃より、大変お世話になってます。
よろしくお願いします。」
優しそうな祖父母で良かったな。
「とにかく、座って?
今、紅茶を持って来させるから。」
晴恵さんはダイニングとソファを手で指し示すと、オレと兄さん、明日香をダイニングの椅子に座らせた。
規則正しいノックの後、メイドさんが、オレらの前に紅茶の入ったカップを置く。
「話は康一郎から聞いた。
そういうことか。
ウチの息子の前妻と、今の明日香ちゃんの母親が同じとは。
私が言うのも何だが、ウチの息子の前妻は性格上、かなり問題があってね。
実際に徹さんと籍を入れたとしても、どうせウチの康介が明日香さんにとって義理の父親になる。
義理の父親が今の母親代わりの人の元旦那だなんて、胸が痛むな。」
「ええ、本当に。
そぉだわ。
…徹。あなたさえ良ければ、こっちに3ヶ月間いなさい。
その間になんとかしてみるわ。
私の知り合いにね、精神科医とカウンセラーの資格を持つ人がいるんだけど、その人なら、明日香ちゃんの血のつながらない母親、つまり継母を"更生"させてあげられるかも。
確証は出来ないけど。
明日香もちゃんも、このままはイヤでしょう?」
不安そうに尋ねる明日香に、優しく声をかける俺のお祖母さん。
明日香の顔にも笑顔が戻った。



