「好きなんでしょう?
ハナちゃんのこと。
幼なじみっていう感情なんてとうに超えて、1人の女の子として。
レンくんと同じように。」

先生は、オレのすべてを知っているのか?
……そう思わせるかのような言い方だった。

「……でもレンくんは、自分の気持ちに気付いてないわ。
気付きさえすれば、レンくんの能力は目覚めるわ。
好きな人を守りたい気持ちを自覚すれば、ね。」

そう言ったのもつかの間、高く大きな光の柱が現れた。

「おめでとう。特訓終了よ!」

パチパチと拍手をしながらそう言う先生。

「オレのアドバイスのおかげなんだから、感謝しろよ?」

そして翌朝。
学校に泊まったオレたちは、朝食の席で先生に呼ばれる。

「ここから電車で一時間の距離の場所にいるわ。なるべく早く見つけてあげて。
"大切な人の身に何かが起こる"ってタロットカート゛に出てるから。」

先生は最近、タロットカート゛にハマっているらしい。

「先生、魔導師より占い師のほうが向いてるんじゃないですか?」

「ありがとう。
魔導、最近廃れてきてるのよね。
占い師に転向しようかしら。」

「おいレン、時間ないぞ!」

「おお、急ぐ!」

オレらは寮の階段を駆け上がって、荷物を持ち、今度は階段を駆け降りた。

「気をつけてね……」

オレたちは、心配する先生に、人差し指と中指を顔の斜め前に出してポーズをすると、足早に学校を出た。

それから数時間後、明野原に到着。
「注意するべきは、"黒い車"か。」

「それよりオレは、"大切な人の身に何かが起こる"ってのが気になる。」

「ミツ、当たるもんだな。
"悪い予感"って。ちょうどそこに黒い車が…」

「まさか……な。」


瞬間、オレの耳に女の悲鳴が届いた。
この声……間違いなく、ハナのものだ。


車の窓の外からでも中は丸見えで、ハナの上には男が馬乗りになっていた。
すぐさまオレは魔導でカギを開け、男に意識喪失魔法をかける。

「大丈夫か?
……久しぶりだな。
こんな形で再会するとは思わなかったけど。」

「ミツ!なんでここに?」

俺をそう呼ぶ可愛い声も、懐かしくて涙が出そうだった。

その話は後で、と言おうとしたら、『カチャ』 と背後から聞き慣れない音がした。
ただ、緊迫した雰囲気で分かる。
銃を向けられたのだ。

銃なんて向けられたことはない。
否応なく身体は固まる。

そんなとき、シールドが目の前に突然現れる。
こんなシールドを作れるのは、オレたちを守りたい気持ちが強い者。
つまり、レンだけだ。

まさか、オレたちを守るべく、自分が犠牲になって怪我をするつもりじゃないだろうな。

そのまさかだった。

乾いた音が響くと、レンの胸の周りは鮮血で染まった。