やっぱり信ちゃんの声だ。

「さっき、先輩に会った。
私、先輩を好きになって良かった。
最後まで優しい先輩だったよ。」


信ちゃんは、きっと気付いてる。

私が泣きそうになっていること。

「そっか。」
そう言って頭を撫でてくれる。

「信ちゃんは?
いるの?
その……好きな人……とか。」

言っちゃったよ。

だって、気になるんだもん。

あの言葉……誰に言ったのか。

私は寝る寸前だったから微かにしか聞こえなかったけどちゃんと
「好きだよ」
って言ってたし……

「いるけど……教えない。
だって……さっき、告白まがいのことしたからなあ。」

え?

ってことは……

あの言葉……

私に言ってたの?


身体が熱い。

ふと見ると、信ちゃんがいつになく真剣な目をしてる。

「ナナちゃん……
じゃない、菜々美?

好きだよ。」

え……

信ちゃんが好きな人って……
私……

ってことだよね?


「で……でも信ちゃん。
私、まだ、先輩にほんの少しだけ未練あるんだよ?
それでも……いいの?」


「それでもいい。
先輩の分までナナちゃんを幸せにするから。」


「信二。
ありがとう。
よろしくね。」


名前で呼んでみる。

かなり違和感がある。
小学校のときから、ずっとこの呼び方だったから余計なのかも。
今まで通り呼び合うことにして、もう遅いし寒くなってきたのでキャビンに戻ることにした。

「お休み。」


って……照れながら返した。