それから、グアムでの3日間は終わりを告げた。

最終日は、女性陣はひたすらグアムで買い物をしていたし、男性陣は思い思いにご飯を食べたりして過ごしていた。

空港からの帰り。

送っていく、という宝月家の使用人の人に無理を言って、ある場所まで連れて行ってもらう。

……ハナの祖母の墓だ。

「ここはね、私のお祖母ちゃんのお墓なの。
優美にとっては、ひいおばあちゃん、かな?」

「優美と優華が産まれてから来てないからね。
ひいおばあちゃんに、初めましてしようか。

って言っても、口に出しちゃダメだ。
心の中で、言うんだぞ。」

オレはそう言って、ハナのお祖母ちゃんの墓石の前で、優美に手を合わせるよう促した。

優美による、ハナの祖母への自己紹介は終わったようだ。
黄色いワンピースの裾の汚れをはたいて、優華の手を引いて、手を合わさせる。

「おばあちゃん、はじめまして!
みつるぎ ゆうかです!
ゆうみの妹です!」

声に出してしまっているが、まぁいいだろう。

思えばまだ3歳なのだ。
幼い子に、今オレたちがしているのがお墓参りという名前の行為だとも分からないだろう。

そもそも、人の死という概念すらまだ理解できない年頃だ。

……連れてくるのはちょっと、いや、大分早かったか。

オレたちも手を合わせて、ハナの祖母の墓を後にした。

「行くか。
気を利かせて、宝月の使用人さん、待ってくれてるからな。」

「ねぇパパ、おんぶー!」

「わかった。
可愛いなぁ、優華は。」

「私より可愛いの?
ちょっと妬いちゃうな。」

そう問いかけるのは、オレの最愛の妻だ。

「お父さん、優華重くない?
お父さんのカバン持つよ」

気を遣ってくれるのは、優美だ。

「おお、ありがと。優美。
ママに似て優しいな。」

「やっぱお前が一番可愛い。
……だから結婚したんだし。」

オレと手を繋ぐ優美には聞こえないように、ハナの耳元で言う。

「ねぇ、ママ?
帰ったらアニメ見ていい?」

オレの背中から、ハナにそう問いかけているのは優華だ。
少し眠そうにしている。

「ん~?いいよ。
今日はね、ママの幼なじみのレンがゲスト声優の回のアニメ、確か今日放送だったわね。」

「さっきまで一緒にいたおじさん?」

「うん。そうだよ?
ママが優美や優華くらいちっちゃいときから、そのおじさんと遊んでたの。

そのおじさんはね、芸能界っていう、すっごいキラキラした世界でお仕事してるんだよ?」

優華に説明させるためとはいえ、おじさん呼ばわりのレンが不憫で笑いを何とか堪えた。
今度謝らなきゃな……。

「げーのーかい?
いつか、優華もいける?
いってみたい!」

「ふふ。
優華なら、きっと行けるわ。」

そんな会話をしているうちに、背中から一定の寝息が聞こえてきた。


……ハナのお祖母さん。

オレたちは今、
貴女の孫と、こんなに温かい家族になれたことをとても幸せに思います。

ずっとずっと、このまま4人で幸せに暮らしていきます。

しっかり、孫とひ孫の幸せを見届けてくださいね?





─END