ボーダー

「とりあえず、いない人もいるけど、お久しぶりー!
乾杯!」

宝月グループが所有するグアムの別荘は、本家の宝月邸とも、日本にある別荘とも、ニューヨークにある別荘とも違う雰囲気だった。
青いタイル、青い調度品などが統一感と、リゾート感を演出している。
壁に埋め込まれた水槽に、優華は興味津々の様子だ。

「おしゃかな、おしゃかな!
おしゃかな、みたいー!」

「見るだけな?
叩いちゃだめだぞ?
おさかなさん、ビックリして、優華のこと嫌いになっちゃうぞ?
叩かないで見る、って約束できるか?」

「しゅるー!」

可愛い娘には弱い。

軽く優華を抱っこして、近くで水槽を見せてやる。

「すっかり娘を溺愛するパパだな、優ったら。
敏腕検察官の面影、ないな。」

「そうね。
そういうところも好きなのよ。
私だけしか知らないミツ、って感じで。」

「相変わらずお互いを溺愛してるのな、御劔夫婦。」

オレが優華を構う後ろで、そんな会話をしている矢榛とハナ。
矢榛のやつ、後でデコピンと眉間グリグリの刑だな。

「ホラ、ゲストなんだぞ?
ミツ、座れ。
そして食え!

宝月家の執事が腕によりをかけて作った料理だぞ。」

ピザやフライドポテト、唐揚げや野菜サラダ、寿司やスイーツまで並んでいる。
さながら、どこかのビュッフェレストランのようだ。

優華が水槽より料理に興味を示したので、オレも料理にありついた。

「ところで、皆は中学とかどうするんだ?
中学受験、させるの?」

……そうか、小学5年生ともなると、中学受験させる人は進路の心配もするのか。
年頃の子を持つ親は大変だ。

「オレのところはさせないな。
学区が変わって学校も変わるとストレスだろうし。
とはいえ、少し家が手狭になって、小学校卒業したら引っ越しを考えてるんだ。

そのほうが、書斎も広く使わせてやれて、のびのび、由紀を研究に没頭させてやれるからな。

由紀に似て頭はいいんだ。
だから、軽々中学受験くらいなら突破できるんだけどな。」

「そうそう。
深月ったら、豆知識、って言って効率のいい年号の覚え方だとか、周りの子に教えてるみたいでね。
面談すると、担任の先生にも言われるの。

『浅川さんは少し年相応、というのを覚えたほうが良いかもしれないです』って。
余計なお世話よ。」

皆がそのエピソードを聞いて押し黙った。

由紀ちゃんの娘なら、十分あり得る。

「友佳と一成くんがいればなー。
盛り上がったのに。
男の子、麗眞くんだけになっちゃったし。

あの2人、友佳は美容室と、スタイリストの仕事がパンパンで、都合つかないんだ!って言ってたし。
一成くんも、今は閑散期だけどその分、宅建の資格取る!って言って勉強してるみたいだから誘わなかったの。」

「去年とその前は、友佳と一成くん、成司くんを連れてきてたのよ?
ハナと優くんのところと入れ違いね。」

そうだったのか。

「まぁ、仕方ないわよ。
友佳、ヘアメイクのセンスあるから、いろんな売れっ子モデルから引っ張りだこなんだから。

私も何度も彼女に頼んでるけど、彼女にヘアメイクを頼むと、カメラマンさんのウケもいいんだ。」

さすが、言うことがモデルだ。

料理が尽きても話は尽きなかった。

「そういえば、バチェロレッテパーティー、メイちゃんの結婚を祝してのとき、ハナちゃんが言ってたのよ。

この中の誰かの子供が同じ時期に出産して、同学年になったらウケるよね、みたいなニュアンスのことを。

ホントにその通りになってない?

麗眞くんに、椎菜ちゃん、琥珀ちゃんに深月。
この辺りは同学年でしょ?

後は、今はいないけど友佳と一成くんのところの、成司くんと彩ちゃんも同学年か!」

由紀ちゃんが言うと、今気付いた、と言わんばかりに皆が目を合わせて笑った。

……気付くの、遅くね?