ボーダー

グアムの前日。

眠れない、という優美を必死に寝かせた。
せっかく寝かせた優華も起きてしまい、寝かしつけることができたのは深夜0時を回った頃だった。

「お前も寝ろ、ハナ。
疲れたろ?」

「疲れてるけど、大丈夫。
優美もミツも、いろいろ気を回してくれるから助かってるんだ。

ありがと。」

「……いいママだけどさ、何でも1人でやろうとするなよ?
オレもいるんだ、優美もいるし、何ならハナの両親もいるだろ。

周りに遠慮なく頼ればいいんだ。

仕事もあるのに、身体壊したら本末転倒だからな。」

可愛い奥さんの頭を撫でながら言うと、照れたようにプイ、と顔を背けたハナ。

「あっ……」

そっと膨らみに触れた。

「優華への授乳終わったの去年だっけ?
大分ハリなくなるとか大きさ変わるとかいうけど、言うほど目に見えて変化してないように見えるんだけど。」

水着で隠れるであろう部分に、薄くシルシをつける。

久しぶりに、他の夫婦と会うのだ。
ハナはオレの愛しい妻なのだということをしっかり見せつけなければならない。

「んも、そういうことされると、優美や優華が起きちゃうでしょ?
もう!」

「んー?
最近あんまり、こういうの出来てなかったな、って思っただけ。
ダメだった?」

ふるふると首を振るハナ。

「まぁ、お互い忙しかったからね。
こういうのも、たまにはやらないとね。

私と違って、ミツはいつ転勤命令下るか分かんないもんね?

せめて、優華が小学校上がったくらいになってくれればいいんだけど。
そういうのって空気読まないからねぇ。

とにかく、明日からは羽伸ばそう!

明日に備えて、寝ますか!
おやすみ、ミツ。」

無邪気にそう言った奥さんは、オレに唇を重ねると、オレに腕枕をさせたまま眠りについた。

翌朝。

「お母さん!
起きて!
目覚まし時計鳴ってるよー!」

「優美、朝ごはんの支度、頼めるか?
お父さんが起こしてくるから。」

「ハナ、起きろ。」

声を掛けても起きないなら、強硬手段だ。
そっと寝息を立てる奥さんに覆い被さる。

そういうことはご無沙汰だったのだが、キャミソールワンピースの裾から手を入れ、ショーツをなぞるように触った。

「んっ……!」

まだまだ、ピク、と身体を反応させてくれる辺りは嬉しい限りだ。

耳元でちょっと朝から聞くにはキワドい一言くらい言えば、起きるだろう。
優美や優華を産んでからのハナは、そういう感じだ。

「起きないとさ、可愛い奥さんを朝ごはん代わりにしちゃうよ?」

「あー、もう!
朝から何してるのよ!
優美はともかく、優華の教育に悪いでしょ?

起きたから、早く降りて!
着替えられないじゃん!」

オレが彼女の上から離れると、ドット柄のガウチョパンツと、ピンクがかったラベンダーのTシャツをいつの間にか着ているハナ。

「あ、言うの忘れてた!
おはよ、ミツ。
ありがとうね、起こしてくれて!」

その言葉とともに、軽く口づけてくれたオレの奥さん。

「そういうとこだよ、ハナ。
母親になっても可愛いから目が離せない。
優華は見ててやるから、支度してこい?」

ありがと、ミツも早く着替えなね、と言ってリビングへ続く階段を降りるハナ。

20分ほど経った頃、メイクも終えた彼女は朝食にありついていたようだ。
オレたちの寝室に来てドアを開けると言った。

「ミツ、優美が作ったスクランブルエッグ美味しいよ。
早く食べて行こう!間に合わなくなる!
優華は私が見るから。」

「いや、朝ごはんは貰うけど、オレは車を運転しなくていいんだ。
7時30分に迎えが来る。」

ジーンズにボーダーのポロシャツを着たオレがそう言うと、愛しの奥さんは首を傾げた。

朝ごはんを食べて、7時30分ジャストに家を出て、鍵を閉める。

もう、見覚えのある長いリムジンはスタンバイしていた。

「おはようございます、優作さん、華恵さん!
優美ちゃんはお久しぶり。
優華ちゃんは、初めてかな?」

顔を出したのは、レンの弟の良太郎だ。

「午後から泊まりの仕事が入って、仕事で行けないから、せめて何か出来ないか、って思ったら、ミツの一家を空港まで送ってやれ、って蓮太郎兄さんから言われて。

どうせ空港には用事があるから、って引き受けたんだ。」

レンの弟が来るとは意外だったが、たまにはこういうのもいいだろう。

「良太郎さん!
またお会いしましょうね!
お仕事、頑張って下さい!」

優美も懐いて、優華も良太郎に手を振る。
子供に好かれるタイプだな、良太郎くんは。

「自分でやるのー!」

シートベルトを自分でやりたいのになかなか上手くできないでグズる優華に手を焼きながら、なんとかグアムに向けて飛行機は出発した。