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「さて、ここからは時間もないので、披露宴に移ります!
と言っても、儀式は最低限です!
新郎新婦のために作ったプロフィールムービーは新郎新婦にプレゼントします、後ほど見てくださいねー!」

司会としてマイクを握るのは将輝だ。

「さて、ここで、ある場所と中継が繋がっているようです。
中継先、聞こえてますかー?」

将輝の言葉とともに、映し出されたのは母校の職員室だ。
真ん中にいるのは多喜本だ。

『ずるいぞ、御劔!
呼んでくれたら行ったのに!
とにかく、結婚おめでとう。

司法試験にも合格したと聞いて、喜びもひとしおだ。

2人とも、仲の良さは高校でも宝月夫妻と1.2を争うほどだったな。

2人らしく、温かい家庭を築いてほしい。

たまには母校にも遊びに来いよ!
おお、元気でやってそうなお前らもだ!

とにかく、おめでとう。
末永くお幸せに!』

映像は、母校の音楽室に切り替わる。

『先輩!
式呼んでくださるの、待ってたんですからね!

とにかく、ご結婚おめでとうございます!

先輩のドレス姿、とっても綺麗です!

合唱部、あれから戦力補強して、コンクール優勝経験もある教師を顧問にして。
吹部に負けないくらい、入賞できる部活になりました!
先輩にも見に来てほしいです!

御劔先輩!
華恵先輩を泣かせたら許しませんからね!
幸せにしてくださいね!
絶対ですよ!

それでは先輩、お身体に気をつけて、先輩らしく笑顔溢れる家庭を築いてくださいね!
お会いできるの、楽しみにしてます!』

母校の合唱部の後輩ちゃんも元気そうで、こんな形で言葉を貰うなんて聞いてなかったであろうハナは、もう目が潤んでいる。

「中継先のお二方、ありがとうございました!
さて、ぜひスピーチをしたい、と立候補された方はいますが、時間の関係上、新郎新婦のために幼なじみであります、宝月 蓮太郎様にお願いいたします。
皆様、盛大な拍手を!」

やっぱり、スピーチはお前だよな、レン。
何たって、オレたちの幼なじみなんだから。

スーツをしっかり着込んだ幼なじみが、壇上に上がってマイクを握った。

『この度はご結婚誠におめでとうございます。
2人とは、幼少期の頃よりずっと一緒に過ごしてきましたね。
時に言葉で伝えずとも、お互いが何を考えているのか分かる関係は、私も日頃より羨ましく感じておりました。

一足先に家庭を持った私から、ささやかですがアドバイスをして、お祝いの言葉にかえさせていただきます。

真面目で、計画をしっかりと立てる性分のお2人です。家族計画も今から練っていることでしょう。
その通りには、なかなかいかないものです。
お2人は法曹の世界に足を踏み入れるのですから私たちが考える数倍は多忙でしょうから尚更です。

理屈で物事を考える新郎と、理屈より感情のままに行動する新婦だからこそ、お互いをフォローし合えるのだとお2人を見て感じています。
だからこそ、今日こうして結婚にまで至ったことは必然だったのでしょう。

お2人らしい、温かい家庭を築きながら、末永くお幸せに過ごしてください。
以上です。』

レンめ。

もう、隣のハナの目からはとめどなく涙があふれている。
後で軽く、レンにはデコピンだな。

『おめでとう。
かねてから弁護士と検察官の夢を叶えてから挙式と入籍を、と言っていた、真面目で実直なお2人ですから、きっとお2人らしく、財布の紐の緩急もしっかりさせながら、生活をしていくことでしょう。

何か困ったら、遠慮なく頼ってください。
私はいつでも、お2人の味方です。

お2人の幸せに、乾杯!』

乾杯の音頭は、メイちゃんが取っていた。

ウエディングケーキは、入刀されたあと、そのままクルーズ船内でデザートとして振る舞われた。

『貴女は、幼少期よりよくお隣に住んでいる優作くんや蓮太郎くんと遊んでいましたね。

そんな貴女が、まだ5歳くらいのときに、両親の前で優作くんと結婚する、と宣言していたときは微笑ましく思ったものです。
貴女は覚えているかしら。

それを現実にしたのは、貴女が自分の決めたことは決して曲げない意思の強さを持った子だったからでしょう。

優作くん。
こんな子です。
その意志の強さゆえ、無理することもあるでしょう、その時は、この子の拠り所になってあげてください。
この子が素直に弱みを見せられるのは、貴方だけですから。

最後に、とある事情で血縁はないですが、それでも華恵、貴女は、私の大事な娘です。
何か困ったら、いつでも頼ってください。

母より』

ハナの母親からの手紙に、ついにオレの妻の涙腺は崩壊していた。

「泣きすぎ。
泣き顔も可愛いけど。」

「ここで、新郎新婦に花束が贈呈されます!」

花束が贈呈されるなんて、聞いてない。
これは何だ。

「幸せな君と、弁護士の仕事が出来るのを楽しみにしている。
司法修習生の際の研修で会おう。」

「安心して。
奥さんに身ごもらせても、そういう体制は整ってるから。」

そう言って、日系アメリカ人の女の子から花束を渡された。

メイちゃんが目を見開いているところから推測するに、この人たちなのだろう。
ハナが弁護士としてのキャリアをスタートさせるべくサポートしてくれるのは。

「こちらこそ、極限で努力してしまいがちな妻をよろしく頼む。」

旦那として、彼らに頭を下げると、挙式と披露宴がないまぜになった会は終了となった。