日が経つのは早い。
オレの幼なじみも、大学の自由さに最初は戸惑ったものの、今では少し慣れ、空き時間や休日はアルバイトに精を出しているようだった。
幼なじみのハナやミツから、たまにかかってくる電話で話すしかできない日々だった。
一足先に父親になった一成から、いろいろ話を聞いているうちにメイも出産の日を迎えた。
相当に痛いらしいメイ。
その横で、オレまでが不安そうな顔をしているわけにはいかなかった。
「オレがいるから、大丈夫だ、メイ。」
とりあえず、必要な品々が入ったカバンを詰め込み、彼女をタクシーに乗せる。
ひたすら、メイの手を握るしか出来なかったがそれでも何もしないよりはマシだ。
「ありがと、蓮太郎。」
陣痛から10時間が経った頃。
「宝月さん、もう少しですよ!
呼吸、ゆーっくりよ!」
「赤ちゃんも頑張ってます!
お母さんも頑張って!」
もう、頭は出てきているらしい。
オレに出来るのは、隣で男には一生出来ない経験をする妻を、励ますことだけだ。
「……頑張れ。
オレがいるから。
ホラ。
こういうことしか出来ないけど。
オレも、ちゃんと自分の子、目の前で見たいからさ。」
オレが、力を加減しながら、メイの手を握った瞬間。
オレとメイの疲れを一気に吹き飛ばしてくれるような泣き声が部屋に響いた。
「おめでとうございます!
2865グラムの女の子ですよ!」
……女の子か。
そういえば、名前を考えてなかったな。
出産後は、少し安静にして様子を見るようだ。
その間、この世に生を受けたばかりの女の子は新生児室で預かってもらっている。
まずは、出産という大仕事をしたメイを休ませてやろう。
身体に何かあっては困る。
「お疲れ様。
よく頑張ったな。
横で手を握ってるくらいしか出来なかったけどもう少し、パパらしくなるように頑張る。
メイも、初めてのことだらけだろうけど、一緒に頑張ろうな。」
メイの頭を優しく撫でると、彼女はゆっくり微笑んだ。
「ね、蓮太郎。
私の鞄の内ポケット、母子手帳と一緒にノートが入っているわ。
それ、付箋が貼ってあるところ、開いてもらっていい?
異議がないなら、これでいこうと思うのよ。
どう?」
メイの言うとおり、彼女の鞄の内ポケットからは母子手帳と一緒に、小さい手のひらサイズのノートが出てきた。
俺に聞く、という付箋が立ててあったページには、何回も消して書き直した後に、大きな字で
『宝月 彩《ほうづき あや》』
と書かれていた。
これ、もしかしてもしかしなくても。
「気に入らないかな?
今は新生児室にいる子の、名前。
貴方に、蓮太郎に、貴方の幼なじみたちに教えられたから。
彩ある人生の楽しさを。
この子も、そんな人生を送ってほしいから。」
「オレもそう思う。
名前に恥じない人生を、送らせてやれるようにしないとな。」
そっと彼女の額に唇を落とした。
すると、カチャ、扉が開いて、隙間からオレの執事の武田が顔を出した。
「旦那さま!
奥様!
よくぞご無事で……
そして、誠におめでとうございます。
私も嬉しいです。
喜びの最中、恐縮ではあるのですが、祝福の電話やメール、お祝いの品などが殺到しております。
強固な宝月邸の回線も何度かパンクしており、目が回るような忙しさなのです。
旦那さま、無理は承知です。
お屋敷に戻っていただけないでしょうか?」
「……いくら武田の頼みでも、それは聞けないなぁ。
今はメイと、我が子が大事だ。
命を賭す覚悟して、頑張ってくれたんだ。
しんどいだろうメイを1人で置いていくなんて出来ない。」
眉を下げる武田。
すると、彼の携帯電話が鳴った。
「おや、蒲田様に御劔様。
エージェントルームに電話やメールを転送すればよろしいのですね。
なるほど、確かに、そうすれば宝月邸でお祝いの品を受け取るだけで済みます。
妙案でございます。
持つべきものは幼なじみ、でございますね。
では、その方向で動きます。
大変助かりました。
それでは、失礼いたします。」
「旦那さまの頼れる幼なじみが、エージェントルームの方々と協力をして、全ての電話やメールに対応してくださるそうです。
お礼はしっかりせねばなりませんね?」
「そうだな。」
どこまでも、頼れる幼なじみだ。
オレの幼なじみも、大学の自由さに最初は戸惑ったものの、今では少し慣れ、空き時間や休日はアルバイトに精を出しているようだった。
幼なじみのハナやミツから、たまにかかってくる電話で話すしかできない日々だった。
一足先に父親になった一成から、いろいろ話を聞いているうちにメイも出産の日を迎えた。
相当に痛いらしいメイ。
その横で、オレまでが不安そうな顔をしているわけにはいかなかった。
「オレがいるから、大丈夫だ、メイ。」
とりあえず、必要な品々が入ったカバンを詰め込み、彼女をタクシーに乗せる。
ひたすら、メイの手を握るしか出来なかったがそれでも何もしないよりはマシだ。
「ありがと、蓮太郎。」
陣痛から10時間が経った頃。
「宝月さん、もう少しですよ!
呼吸、ゆーっくりよ!」
「赤ちゃんも頑張ってます!
お母さんも頑張って!」
もう、頭は出てきているらしい。
オレに出来るのは、隣で男には一生出来ない経験をする妻を、励ますことだけだ。
「……頑張れ。
オレがいるから。
ホラ。
こういうことしか出来ないけど。
オレも、ちゃんと自分の子、目の前で見たいからさ。」
オレが、力を加減しながら、メイの手を握った瞬間。
オレとメイの疲れを一気に吹き飛ばしてくれるような泣き声が部屋に響いた。
「おめでとうございます!
2865グラムの女の子ですよ!」
……女の子か。
そういえば、名前を考えてなかったな。
出産後は、少し安静にして様子を見るようだ。
その間、この世に生を受けたばかりの女の子は新生児室で預かってもらっている。
まずは、出産という大仕事をしたメイを休ませてやろう。
身体に何かあっては困る。
「お疲れ様。
よく頑張ったな。
横で手を握ってるくらいしか出来なかったけどもう少し、パパらしくなるように頑張る。
メイも、初めてのことだらけだろうけど、一緒に頑張ろうな。」
メイの頭を優しく撫でると、彼女はゆっくり微笑んだ。
「ね、蓮太郎。
私の鞄の内ポケット、母子手帳と一緒にノートが入っているわ。
それ、付箋が貼ってあるところ、開いてもらっていい?
異議がないなら、これでいこうと思うのよ。
どう?」
メイの言うとおり、彼女の鞄の内ポケットからは母子手帳と一緒に、小さい手のひらサイズのノートが出てきた。
俺に聞く、という付箋が立ててあったページには、何回も消して書き直した後に、大きな字で
『宝月 彩《ほうづき あや》』
と書かれていた。
これ、もしかしてもしかしなくても。
「気に入らないかな?
今は新生児室にいる子の、名前。
貴方に、蓮太郎に、貴方の幼なじみたちに教えられたから。
彩ある人生の楽しさを。
この子も、そんな人生を送ってほしいから。」
「オレもそう思う。
名前に恥じない人生を、送らせてやれるようにしないとな。」
そっと彼女の額に唇を落とした。
すると、カチャ、扉が開いて、隙間からオレの執事の武田が顔を出した。
「旦那さま!
奥様!
よくぞご無事で……
そして、誠におめでとうございます。
私も嬉しいです。
喜びの最中、恐縮ではあるのですが、祝福の電話やメール、お祝いの品などが殺到しております。
強固な宝月邸の回線も何度かパンクしており、目が回るような忙しさなのです。
旦那さま、無理は承知です。
お屋敷に戻っていただけないでしょうか?」
「……いくら武田の頼みでも、それは聞けないなぁ。
今はメイと、我が子が大事だ。
命を賭す覚悟して、頑張ってくれたんだ。
しんどいだろうメイを1人で置いていくなんて出来ない。」
眉を下げる武田。
すると、彼の携帯電話が鳴った。
「おや、蒲田様に御劔様。
エージェントルームに電話やメールを転送すればよろしいのですね。
なるほど、確かに、そうすれば宝月邸でお祝いの品を受け取るだけで済みます。
妙案でございます。
持つべきものは幼なじみ、でございますね。
では、その方向で動きます。
大変助かりました。
それでは、失礼いたします。」
「旦那さまの頼れる幼なじみが、エージェントルームの方々と協力をして、全ての電話やメールに対応してくださるそうです。
お礼はしっかりせねばなりませんね?」
「そうだな。」
どこまでも、頼れる幼なじみだ。



