それから日は流れて、オレの大事な幼なじみ2人が入学式だ、と言っていた日になった。
大学は違えど、有海ちゃんも今日が入学式なのだという。
有海ちゃんの実家を来月にはリフォームする。
それまで、宝月の別荘にいてもらう。
有海ちゃんの父親には、話し合いも兼ねて、ここ宝月邸にいてもらうことになっている。
そんな中、バタバタと、武田がオレたちの寝室に駆け込んできた。
「おはようございます。騒がしくて申し訳ございません。
旦那さま、私は駅に行き、一木 有海様を大学まで送り届けてまいります。
どうやら、朝方起きた人身事故と、立て続けに起きた信号機故障の影響で、今、列車は全線止まっております。
復旧するのは朝の8時過ぎの見込みとのこと。
そこまで待つと入学式には、もちろん間に合いませんので。
これも恩返しの一環です!」
武田はそう言って、オレに軽自動車のキーを投げてよこした。
そのキーがささる車は1つだ。
オレがこっちでも免許を取るべく、教習所を卒業したばかりの頃。
運転に慣れるべく、武田がこの車を使うように進言してくれたのだ。
その時、彼は言った。
「使用頻度の低い車です。
旦那様が乗ってください。
奥様を検診に連れて行くときや、大事な旦那さまのご友人に何かあったときにお使いいただけるかと。
ナンバーは、文字こそ、宝月グループ共通でほです。
しかし、ナンバーの意味は、旦那様と奥様の誕生日の数字をもとに細工しております。
いつか、謎を解いてくださいね?
使うときに、鍵をお渡しします。」
……そういうことかよ。
いい判断だ、武田。
デキる執事を持てて誇らしい。
急いでリビングに行ってニュースをつけると、速報で流れていた。
ホームも改札口階も人で溢れている。
朝ごはんのサンドイッチは高速で食べ終えた。
寝室でギンガムチェックのシャツにジーンズ、白いカーディガンに着替えた後、オレの愛しい妻に告げた。
「悪いな、メイ。
なるべく側にいたいのはやまやまだけど、緊急事態なんだ。
出掛けてくる。」
聡い彼女は、オレがそう言うのを読んでいたように、にっこりと微笑んだ。
「それでこそ、私の旦那さん。
行ってらっしゃい。」
行ってらっしゃいのときは軽く唇を重ねるのが合図だ。
ガレージの扉を開け、軽自動車に乗り込んでエンジンを掛ける。
駅に着く頃、信号待ちの隙に、幼なじみのうち1人に1通のメールを入れる。
『ロータリー、黒い軽自動車、ほ 1743 を探してくれ。
それがオレの車だ』
『助かるよ、さすがレンだ。
持つべきものは幼なじみだな』
メールを送った主からの返信の後、星とハートのブローチを掲げているグレーのスーツのカップルが微かに見えた。
この人混みで、普通なら近付けないが、オレたちにはブローチがある。
テレパシー機能は、もう使えなくなっている。
そのことを知った伊達さんが、彼の妻の育児の合間を縫って、ある機能をブローチに追加してくれた。
車の窓を少し開けて、耳を澄ます。
モスキートーンがよく聞こえる方に行けば、彼らの元に辿り着けるという寸法だ。
若いうちにしか使えないが、それでも、こういうときには便利だ。
見つけた合図に、軽くクラクションを鳴らす。
バックミラーに、オレの車を慣れないスーツ姿で追う幼なじみの姿が映った。
そのブローチはポケットの中なのだろう、その手はしっかりと恋人つなぎがされている。
「いいから乗れ、ミツにハナ。
最寄り駅まで送ってやる。
裏道は宝月グループ特注のカーナビが教えてくれるからな。
まぁ、宝月グループというより、柏木さんの弟に感謝なんだが。」
彼らを車の後部座席に乗せ、シートベルトを手早く締めさせる。
「いいだろ、オレはお前の婚約者なんだから。
シートベルト締めるときにキワドイところ触ったからって拗ねるなよ。
拗ねてる恋人も可愛いけど。
こんな痴話喧嘩してる時間も惜しい。
車、出してくれるか、レン。」
「了解。
少々飛ばす、掴まれ。」
そう言って、車のハンドルを巧みに操作した。
大学は違えど、有海ちゃんも今日が入学式なのだという。
有海ちゃんの実家を来月にはリフォームする。
それまで、宝月の別荘にいてもらう。
有海ちゃんの父親には、話し合いも兼ねて、ここ宝月邸にいてもらうことになっている。
そんな中、バタバタと、武田がオレたちの寝室に駆け込んできた。
「おはようございます。騒がしくて申し訳ございません。
旦那さま、私は駅に行き、一木 有海様を大学まで送り届けてまいります。
どうやら、朝方起きた人身事故と、立て続けに起きた信号機故障の影響で、今、列車は全線止まっております。
復旧するのは朝の8時過ぎの見込みとのこと。
そこまで待つと入学式には、もちろん間に合いませんので。
これも恩返しの一環です!」
武田はそう言って、オレに軽自動車のキーを投げてよこした。
そのキーがささる車は1つだ。
オレがこっちでも免許を取るべく、教習所を卒業したばかりの頃。
運転に慣れるべく、武田がこの車を使うように進言してくれたのだ。
その時、彼は言った。
「使用頻度の低い車です。
旦那様が乗ってください。
奥様を検診に連れて行くときや、大事な旦那さまのご友人に何かあったときにお使いいただけるかと。
ナンバーは、文字こそ、宝月グループ共通でほです。
しかし、ナンバーの意味は、旦那様と奥様の誕生日の数字をもとに細工しております。
いつか、謎を解いてくださいね?
使うときに、鍵をお渡しします。」
……そういうことかよ。
いい判断だ、武田。
デキる執事を持てて誇らしい。
急いでリビングに行ってニュースをつけると、速報で流れていた。
ホームも改札口階も人で溢れている。
朝ごはんのサンドイッチは高速で食べ終えた。
寝室でギンガムチェックのシャツにジーンズ、白いカーディガンに着替えた後、オレの愛しい妻に告げた。
「悪いな、メイ。
なるべく側にいたいのはやまやまだけど、緊急事態なんだ。
出掛けてくる。」
聡い彼女は、オレがそう言うのを読んでいたように、にっこりと微笑んだ。
「それでこそ、私の旦那さん。
行ってらっしゃい。」
行ってらっしゃいのときは軽く唇を重ねるのが合図だ。
ガレージの扉を開け、軽自動車に乗り込んでエンジンを掛ける。
駅に着く頃、信号待ちの隙に、幼なじみのうち1人に1通のメールを入れる。
『ロータリー、黒い軽自動車、ほ 1743 を探してくれ。
それがオレの車だ』
『助かるよ、さすがレンだ。
持つべきものは幼なじみだな』
メールを送った主からの返信の後、星とハートのブローチを掲げているグレーのスーツのカップルが微かに見えた。
この人混みで、普通なら近付けないが、オレたちにはブローチがある。
テレパシー機能は、もう使えなくなっている。
そのことを知った伊達さんが、彼の妻の育児の合間を縫って、ある機能をブローチに追加してくれた。
車の窓を少し開けて、耳を澄ます。
モスキートーンがよく聞こえる方に行けば、彼らの元に辿り着けるという寸法だ。
若いうちにしか使えないが、それでも、こういうときには便利だ。
見つけた合図に、軽くクラクションを鳴らす。
バックミラーに、オレの車を慣れないスーツ姿で追う幼なじみの姿が映った。
そのブローチはポケットの中なのだろう、その手はしっかりと恋人つなぎがされている。
「いいから乗れ、ミツにハナ。
最寄り駅まで送ってやる。
裏道は宝月グループ特注のカーナビが教えてくれるからな。
まぁ、宝月グループというより、柏木さんの弟に感謝なんだが。」
彼らを車の後部座席に乗せ、シートベルトを手早く締めさせる。
「いいだろ、オレはお前の婚約者なんだから。
シートベルト締めるときにキワドイところ触ったからって拗ねるなよ。
拗ねてる恋人も可愛いけど。
こんな痴話喧嘩してる時間も惜しい。
車、出してくれるか、レン。」
「了解。
少々飛ばす、掴まれ。」
そう言って、車のハンドルを巧みに操作した。



