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「新婦の主賓の安田 裕美様に今一度、温かい拍手をお願いいたします。」

「続きまして、新郎の主賓を代表しまして、多喜本 一茂《たきもと かずしげ》様より、お祝いのスピーチをいただきたいと思います。」

スポットライトに照らされた多喜本先生に、会場がどよめいた。

「タッキー、久しぶりに見たー!」

「タッキー、定年超えても働くって言ってたんだけど。
さすがに担任は今年で最後みたい。」

「この度は、新郎、一成さん並びに新婦、友佳さん、そしてご両家の皆様。
この度はご結婚おめでとうございます。

先程ご紹介にあずかりました、新郎と新婦の高校の担任をしておりました、多喜本 一茂と申します。

僭越ではございますが、一言、お祝いを述べさせていただきます。

新郎、一成くんと、新婦の友佳さんは1年生の時は同じクラスで、そこで一緒に過ごすうちに仲を深めたようです。

教室移動の時は大抵2人一緒で、当時から仲睦まじい様子を拝見しておりました身としては、こうしてお二人が晴れの日を迎えられたことに大変感激しております。

このような場でお話するのもいかがなものかと思いますが、彼は図に乗ることも多く、学校行事ではお祭り騒ぎをしておりました。
タッキーというあだ名で私を最初に呼び始めたのも実は一成くんです。

その明るい性格は、これから二人で新しい生活へと船出するときの助けになると思います。

新婦の友佳さんについて、一成くんにどんな存在かと面談で尋ねたことがあります。

明るすぎる私のツッコミ役であり、喜怒哀楽がしっかり表出されるので横にいて飽きない存在で横にいないと私が私じゃないみたいだ、と言っていたのを今でも覚えています。

実際に、新婦の友佳さんは、学年集会の際、割と最後の方まで周囲の人間と私語をしていた彼の、額を指で軽く弾いてよく窘めていたのを覚えています。
それと同時に、友佳さんに頭が上がらない未来図が見えました。

私は教師として、これまでに何百、何千という生徒を迎え、そして送り出してきました。
残念ながら、一度送り出したまま会うことがない生徒も大勢いるのであります。

しかし、本日、このような席にお招きいただき立派に成長した姿を目の当たりにするときは、教師冥利に尽き、なんと素晴らしいものなのかと心の底から思うのでございます。

一成、友佳さん、本当にありがとう。

ぜひ、困難なこともあるでしょうが、若いお二人ならお互いに手を携えて乗り越えていけると信じています。
これから暖かく幸せな家庭を築いていってください。
お二人の未来に幸多きことをお祈りし、お祝いの言葉とさせていただきます。
ご清聴、誠にありがとうございました。」

後で、タッキーにお礼言わなきゃな。
横をチラ、と見ると、一成の目が潤んでいた。

『先程、スピーチをされていた多喜本先生の次に新郎新婦の担任をしていた、岡副 彩夏《おかぞえ あやか》と申します。

2人は同じクラスで、進路面談のときに高校を卒業したら働く、自分でお金を稼ぐと言っていました。
私は大学に進むメリットと、進まないメリットもお話ししました。
しかし二人の決意は変わらず、一成くんは友佳さんを、友佳さんは一成くんと共に暮らすと言い切っていたのが大変印象深いです。
また、ある日の放課後に婚姻届を見せてきて、高校の卒業式の日に出すから、証人欄に署名が欲しい、と二人で私に依頼してきたのは今でも覚えています。

若いからこその行動力で、これからお二人らしい、笑顔溢れる明るい家庭を築いていけることを心よりお祈りいたします。

お二人の新たな門出に乾杯!』

岡副先生まで来るなんて、聞いてない。
後でお礼言わないとな。