「そろそろ話し疲れましたか?
パジャマに着替えて、いつでも寝られるようにしますか!」
そう言ったのはナナちゃんだったか。
部屋の内線電話を取り、ハナちゃんが番号を押すと、コンコンとノックの音がした。
ダンボールを抱えた男性が、皆さんの分だと言って持ってきてくれた。
ダンボールに入っていたのは、万札が数枚飛んでいく価格帯のルームウェア店で売られているものだ。
「ある方からの差し入れです。
朝まで楽しんで、お土産話や写真を楽しみにしている、という伝言を承っております。」
これ、もう絶対蓮太郎だ。
カラフルボーダーパーカーやロングパンツのセットアップ、ワンピースなどが揃っている。
「蓮太郎くん、と見せかけて私だよ!
撮影で使ったやつ買い取ったのと、ウィッシュリストにあったパジャマ、ここでプレゼントさせてもらった!
あとは、箱の底に袋があるでしょ?
それもプレゼント!」
「使うのはかなり先になるかもしれないね?
刺激的な夜にしてね?
あ、旦那さんがいるときに開けてね?」
ナナちゃんの高い声で、耳元で囁かれると、同性の私でも変な気を起こしそうになる。
さぞかし、ナナちゃんの彼氏さんは満足なんだろうなぁ。
みんな、思い思いのルームウェアを着て、はっちゃけた日の締めだ。
ダンボールのついでに持ってきてくれたジュースを飲みながら、改めて乾杯をする。
「メイちゃん、幸せのお裾分けありがとう!
カンパーイ!」
「いろいろ、準備とか大詰めだけど、ブライズメイド一同、楽しみましょう!」
「挙式後の2次会、お楽しみにー!」
「皆、今日はありがとう!
飲んで騒いで写真撮って、楽しかった!
あと1週間で独身じゃなくなる前に、皆とたくさんはしゃげて夢みたい。
私は結婚しても宝月邸にいるから、いつでも来て。
皆なら大歓迎よ。」
そこで1度言葉を切る。
「そういえば、私の旦那がこんなことも言っていたわ。
『ブライズメイドもアッシャーも引き受けてもらって、ずっと見守ってもらって、感謝してもしきれない。
少しずつ、感謝の気持ちを行動で返していきたいと思ってる。
だから、何か困ったら遠慮なく言ってほしい。
人身事故に巻き込まれて大学に遅れそうだとか大学内での人間関係に困ったら相談してくれればなんとかする。
足が欲しければ、暇なら武田を来させることもできる。
由紀ちゃんや奈斗、将輝は、困ったら村西さんか遠藤さんに伝えてくれれば、2人のどちらかを経由してオレに話が行くから。』
だそうよ。
蓮太郎には、ここにいる皆の分も、ご褒美あげなきゃかしら。」
部屋の内線が鳴った。
そういえば、有海ちゃんの姿が見当たらない。
たまたま近くにいた私が出る。
『ごめん、ちょっとだけラウンジに。
ホテルの支配人さんから頼まれちゃって。
本当は、夜に生のピアノ演奏のはずだったの。
私から見れば雲の上の人のピアニストがね。
でも、急にその人が体調崩しちゃったみたいだから、みんな待ち望んでるし頼まれてくれ、って。
曲は何でもいいし、それ相応のお礼はする、って言われたから。
ちょっと弾いてくる!』
内線は切れた。
やがて、モニターに映像が映った。
この映像は、このホテルの1つ下にあるバーに隣接したラウンジだ。
そこに置かれたピアノに、彼女が座った。
先程まで着ていたルームウェアではなく、オレンジのレースドレスを身に纏い、ベージュのパンプスを履いている。
一瞬の静寂のあと、柔らかな旋律が鼓膜を撫でた。『エリーゼのために』だ。
その美しい調べの続きを聞かせるように、そのままノクターンが演奏された。
最後にアラベスクが演奏された。
もう1曲だけ、というリクエストを貰ったらしい彼女は、もう一度ピアノの前に座る。
十八番だというショパンの『革命』。
左手がとにかくやたらめったら動くのに、右手がそれにつられず、ちゃんと異なる動きをしていることが、すごいとしか言いようがない。
そんな曲を、つっかえることなく弾ききり、笑顔さえ浮かべている。
私たちも、部屋のカギをかけてラウンジに降りて、彼女を迎えに行く。
とにかく、有海ちゃんにお疲れ様の意を込めて肩を叩いたり、甘いカフェラテやスイーツを奢ったりした。
その影から、赤いワンピースの女性と、ホテルの支配人が有海ちゃんをじっと見つめていたことに気付いた。
その人たちは私に微笑みかけて、言った。
「貴女たち、彼女のお友達かしら。
さっきの演奏の、動画を持っていたりする?らその映像のだけ欲しいの。
ビデオカメラの中のカードを手持ちのパソコンにさすから、カードだけもらえないかしら。」
会話を聞いていた由紀ちゃんが、ビデオからカードを抜いて、渡す。
彼女は慣れた手付きでパソコンを操作し、動画をコピーして、由紀ちゃんにSDカードを返す。
「ありがとう。
これで、いつでもあの素晴らしい演奏が聴けるわ。」
赤いワンピースの女の人は、私たちに会釈をすると、このホテルの支配人だろうか、タキシードを着込んだ人の方に向かった。
「部屋戻るってー、行こう!」
愛実ちゃんに手を引かれて、部屋に戻った。
パジャマに着替えて、いつでも寝られるようにしますか!」
そう言ったのはナナちゃんだったか。
部屋の内線電話を取り、ハナちゃんが番号を押すと、コンコンとノックの音がした。
ダンボールを抱えた男性が、皆さんの分だと言って持ってきてくれた。
ダンボールに入っていたのは、万札が数枚飛んでいく価格帯のルームウェア店で売られているものだ。
「ある方からの差し入れです。
朝まで楽しんで、お土産話や写真を楽しみにしている、という伝言を承っております。」
これ、もう絶対蓮太郎だ。
カラフルボーダーパーカーやロングパンツのセットアップ、ワンピースなどが揃っている。
「蓮太郎くん、と見せかけて私だよ!
撮影で使ったやつ買い取ったのと、ウィッシュリストにあったパジャマ、ここでプレゼントさせてもらった!
あとは、箱の底に袋があるでしょ?
それもプレゼント!」
「使うのはかなり先になるかもしれないね?
刺激的な夜にしてね?
あ、旦那さんがいるときに開けてね?」
ナナちゃんの高い声で、耳元で囁かれると、同性の私でも変な気を起こしそうになる。
さぞかし、ナナちゃんの彼氏さんは満足なんだろうなぁ。
みんな、思い思いのルームウェアを着て、はっちゃけた日の締めだ。
ダンボールのついでに持ってきてくれたジュースを飲みながら、改めて乾杯をする。
「メイちゃん、幸せのお裾分けありがとう!
カンパーイ!」
「いろいろ、準備とか大詰めだけど、ブライズメイド一同、楽しみましょう!」
「挙式後の2次会、お楽しみにー!」
「皆、今日はありがとう!
飲んで騒いで写真撮って、楽しかった!
あと1週間で独身じゃなくなる前に、皆とたくさんはしゃげて夢みたい。
私は結婚しても宝月邸にいるから、いつでも来て。
皆なら大歓迎よ。」
そこで1度言葉を切る。
「そういえば、私の旦那がこんなことも言っていたわ。
『ブライズメイドもアッシャーも引き受けてもらって、ずっと見守ってもらって、感謝してもしきれない。
少しずつ、感謝の気持ちを行動で返していきたいと思ってる。
だから、何か困ったら遠慮なく言ってほしい。
人身事故に巻き込まれて大学に遅れそうだとか大学内での人間関係に困ったら相談してくれればなんとかする。
足が欲しければ、暇なら武田を来させることもできる。
由紀ちゃんや奈斗、将輝は、困ったら村西さんか遠藤さんに伝えてくれれば、2人のどちらかを経由してオレに話が行くから。』
だそうよ。
蓮太郎には、ここにいる皆の分も、ご褒美あげなきゃかしら。」
部屋の内線が鳴った。
そういえば、有海ちゃんの姿が見当たらない。
たまたま近くにいた私が出る。
『ごめん、ちょっとだけラウンジに。
ホテルの支配人さんから頼まれちゃって。
本当は、夜に生のピアノ演奏のはずだったの。
私から見れば雲の上の人のピアニストがね。
でも、急にその人が体調崩しちゃったみたいだから、みんな待ち望んでるし頼まれてくれ、って。
曲は何でもいいし、それ相応のお礼はする、って言われたから。
ちょっと弾いてくる!』
内線は切れた。
やがて、モニターに映像が映った。
この映像は、このホテルの1つ下にあるバーに隣接したラウンジだ。
そこに置かれたピアノに、彼女が座った。
先程まで着ていたルームウェアではなく、オレンジのレースドレスを身に纏い、ベージュのパンプスを履いている。
一瞬の静寂のあと、柔らかな旋律が鼓膜を撫でた。『エリーゼのために』だ。
その美しい調べの続きを聞かせるように、そのままノクターンが演奏された。
最後にアラベスクが演奏された。
もう1曲だけ、というリクエストを貰ったらしい彼女は、もう一度ピアノの前に座る。
十八番だというショパンの『革命』。
左手がとにかくやたらめったら動くのに、右手がそれにつられず、ちゃんと異なる動きをしていることが、すごいとしか言いようがない。
そんな曲を、つっかえることなく弾ききり、笑顔さえ浮かべている。
私たちも、部屋のカギをかけてラウンジに降りて、彼女を迎えに行く。
とにかく、有海ちゃんにお疲れ様の意を込めて肩を叩いたり、甘いカフェラテやスイーツを奢ったりした。
その影から、赤いワンピースの女性と、ホテルの支配人が有海ちゃんをじっと見つめていたことに気付いた。
その人たちは私に微笑みかけて、言った。
「貴女たち、彼女のお友達かしら。
さっきの演奏の、動画を持っていたりする?らその映像のだけ欲しいの。
ビデオカメラの中のカードを手持ちのパソコンにさすから、カードだけもらえないかしら。」
会話を聞いていた由紀ちゃんが、ビデオからカードを抜いて、渡す。
彼女は慣れた手付きでパソコンを操作し、動画をコピーして、由紀ちゃんにSDカードを返す。
「ありがとう。
これで、いつでもあの素晴らしい演奏が聴けるわ。」
赤いワンピースの女の人は、私たちに会釈をすると、このホテルの支配人だろうか、タキシードを着込んだ人の方に向かった。
「部屋戻るってー、行こう!」
愛実ちゃんに手を引かれて、部屋に戻った。



