ボーダー

ケータリングはとても美味しかった。
あらかたキワドい話も終わったところで、由紀ちゃんがビデオカメラを手に撮った。

「ちょっと映像撮ります!
カメラ回すー!」

まだ少し残っている料理にもカメラを回しながら、私を撮る由紀ちゃん。

「どうですか?
あとちょうど1週間後で挙式ですけど、挙式を控えた今のお気持ちを率直に。」

「素直に嬉しいわ。
やっと名実ともに、蓮太郎と夫婦になれるんですもの。

まだ、私も勉強することが多くあるわ。
妻としても、宝月グループの当主を支える役としても。
母親としても、が近いうちに加わるかもしれないけれど。

とにかく、彼の隣にいることで、彼の長所もたくさん吸収したいわね。

内輪しか呼ばないからこそ、幸せをお裾分けしたい、と心から思っているわ。」

「その台詞、会見のときにも仰ってましたね。
その向上心は、宝月グループ当主に相応しい女性でありたいというところから来るんでしょうか?」

「そうよ。
女性として、愛する人の隣に並ぶのに相応しい素敵な女性でいたいと常に思っているもの。
それくらい、彼は私を180度変えてくれた素晴らしい人だもの。」

「率直な気持ちをお話くださり、ありがとうございました!」

皆からの拍手が送られ、ビデオカメラは止められた。

何やら愛実ちゃんと由紀ちゃんが言っている。
何をしているのやら。

堅苦しい表情になっていなかったかが不安だが今更気にしても仕方がない。
カメラが止まったことを見越してか、誰かがポツリと月イチのあの日の話題を口にする。

「終わりかけ、ってさ、仮に夜、誘われたときどうしてる?
ってか誘われた場合どうする?

意見ちょうだい。

将輝も奈斗とか蓮太郎くんには負けるけど、それでも有り余ってるから、終わりかけならいいだろ、って感じなの。
しかも周期把握してるっぽいし。
ホント困る!」

そう話すのは由紀ちゃんだ。

「うーん、ウチの旦那もそうだったわよ。
周期は把握してたっぽいわね。

生理終わりで欲求不満だったんだろ?抱かせろみたいなニュアンスで迫ってきたことあったからね。

さすがに、終わりかけで求めてくることはなかったけど。
歳の離れた姉もいるし、身近な異性にはハナちゃんがいたはず。
終わりかけでもしんどいはず、ってなんとなく分かってたんじゃない?」

「え、いいなぁ。
メイちゃんの旦那紳士だなー。
奈斗なんて、終わりかけなら普通にいいよね?って感じよ。
私も頷いてるしね。

そろそろ来そうだから、また迫られるんだろうけど。
まぁ、そこまで頻繁に会えないし、着けるもの着けてくれてればいいかな、みたいには思ってる。」

「私のところもそんな感じだよ?
私が、モデルで忙しいから、月イチで会えればいいほうだから、ピークと久しぶりのデートが被ったら断っちゃうけど。
ピーク越えてたら、お誘いに応じちゃうな。

信ちゃんの場合、そこまで彼自身旺盛じゃないから、さっくり1回で終わらせるし。」

愛実ちゃんと友佳ちゃん以外からの羨望の眼差しが、一気に菜々美ちゃんに集まった。

「いいなぁ、将輝と交換してほしい。」

何気なく呟いた由紀ちゃんの言葉に、皆がうんうんと頷いた。
それがどうやら答えのようだ。

「将輝くんは由紀ちゃんラブ、というか、もう溺愛してるんだから、断りたいときは『終わりかけだから無理なの。
でも、終わったらちゃんとリクエストに答えるから、何でも言ってね?』って上目遣いで言えばあっさり引き下がるんじゃない?」

「そうだよー。
私とミツなんて、よくご褒美、って表現使ってるよ?
ご褒美あげるね?
が夜のお誘いの隠語みたいな感じかな。

ついでに言うと、ディープなキスが、ミツが入ってくる合図、っていうのが私たちの暗黙の了解になってる。」

「そういうの大事なんだねぇ、さすがは幼なじみカップル。
というかもう、婚約者か。

もう結婚しちゃいなよ!」

普段あまりこういう話をしないハナちゃんまでも話の輪に入っているとは。

会話がだんだん下世話になっている。
その矛先は突然に私に向いた。

「んで?メイちゃんはどうなの?
何かあるの?
もう夫婦なんだもんね、何も言わなくてもそうなる感じか。
羨ましいー。」

「まぁ、最近はそんな感じね。
排卵日狙い撃ちされてたから特に。

私たちの場合は、頭撫でてくれるのが着けてくれる合図だったのよ。
でも、もうしなくてよくなったから、頭撫でながら愛してる、って言ってくれるのが、彼が来る合図のような感じね。」

「ラブラブでいいなあー!」

女子しかできない下世話な話題は、部屋にあるお風呂に交代で入る間も続いた。