ボーダー

「ん……」

ゴロン、と寝返りをうつと、目が覚めた。
横を見ると、すやすやと寝息を立てる旦那がいた。

ちょっと、意地悪しちゃおうかな。

朝だからか大きくなっている、彼の脚の間にあるものを、そっと口に含んで、動かした。

「んー?
朝から気持ちよくしてくれるの?
エッチな奥さん。」

上から、声が降ってきた。

……いつから起きてたの?

「でもさ、朝だから刺激強いとすぐ出ちゃいそうなの。
もったいないからさ?
こっちがいいな。」

少なからず、私も昨日の2回じゃ足りなかったらしい。

潤い具合を確かめて、にっこり微笑んだ蓮太郎は、何も言わずに私の中に侵入した。

「あっ……!
んぅ……」

彼の言うとおり、欲情したときのいつもの大きさと硬さになっているのを感じた。

少し動くと、ぎゅ、と私を抱きしめてくれる。愛してるの言葉と、深いキスの後、熱い液体を感じる。

「やべ、ごめん。
昨日よりは量少なめだと思うけど。

でも、もう結婚したんだし、朝から子作りもいいでしょ?」

「……もう、バカ。」

何だかんだ言いながら、シャワーも旦那と一緒に浴びた。
唯一、こんな部屋に泊まっていいのかと思わせる、このホテルに数部屋しかない、客室露天風呂に2人で浸かる。

「ごめん、朝から奥さんがご奉仕してくれたの嬉しくて、つい。」

「怒ってないわ。
大丈夫。

これからは控えめに、ね?

ここ数日のでデキたかもしれないし、身体に気をつけて過ごさなきゃいけないし。
挙式の準備もあるんだから。」

「はぁい。」

ちょっと不満気な旦那さんの唇に、ついばむようなキスを落とした。

「大丈夫。
妊娠中であまりできなくても浮気はしないよ?
メイにしか反応しないし。

昔、柏木さんの異母弟が、奥さんが妊娠中で夜の相手してもらえない苛立ちをオレたちにぶつけてきたことがあってさ。

そういうことは、したくないな、って思う。

今回の黒沢夫婦、じゃないけどさ。
妊娠っぽい兆候みたいなの出てきて、それが話せそうならオレにも話してほしい。

1人で抱え込まれちゃ、オレはテレパシー使えるわけじゃないから、分からないんだ。
頼んでいい?」

そういう、旦那の優しいところを好きになったんだもんな、私。

「……うん、分かった。」

いい子、とても言うように頭を撫でて、キスをくれる蓮太郎。

「もう6時30分だ。
支度して、朝ごはん食べに降りよっか。
今日、水族館デートだもんね?」

私がねだったのだ。
仮に、これから妊娠するとしたら。
こういうことも、徐々にできなくなっていく。

できるうちに、2人の時間を作りたかった。

「うん、そうしよ!」

身体を拭いて、沖縄の海みたいな青いキャミソールワンピースに、白いカーディガン、白いサンダルを履く。

軽くメイクをして、私の誕生石のピアスを付けると、準備は完了だ。

旦那と手を繋いで、エレベーターに向かう。

荷物は、後で取りに行けばいい。

朝食会場のレストランに降りると、問題の夫婦1組以外は揃っていた。

出かける前に、ちょっとバシッと言ってからにするか。

しきりに瞬きをして、眠気と戦っているハナちゃんを見つけた。

「大丈夫。
ちょっと婚約者さんが寝かせてくれなかったから寝不足なだけ。」

「そう言うなら、心配しすぎることはないんだろうけど、無理はしないでね?
ハナちゃん。」

彼女に心配の言葉を掛けながらも、彼女の婚約者である御劔くんをジト目で睨んだ。

ビュッフェを食べ終えると、部屋に戻って荷物だけを取る。
そして、蓮太郎に着いていく。
水族館に向かう前に、一つ言いたいことがある夫婦がいるからだ。

「おはよう。
起きてるかしら?」

部屋に入ると、夫婦の片割れの旦那はどこかに出かけたようで、いなかった。

妊娠検査薬は、箱は開けられていたものの、まだ中身を使った形跡がなかった。

「……大方、いるかもしれないお腹の中の子供を無事に育てられるか不安、といったところかしらね。

……安心なさい。
貴女の両親も、旦那の両親も、きっと協力してくれるはずよ。

第一、今から将来を悲観して、何になるのかしら?」

私の言葉の後に、蓮太郎が継ぐ。
そんな計画は聞いていなかったが、きっとバタバタしていたのは、そのせいもあるのだろう。

「それと、友佳ちゃんがお世話になってる賢正学園。
少々手狭になってきたみたいで、新しい土地に移す計画が持ち上がってるんだ。

新しい土地に、新しい学園……
むしろ私立の中高一貫校を作って、そこにまるごと今いる子たちを移すのも手、ってことになってる。
それ以外の生徒をどうするか、思案中だがな。

その、一番お世話になってる澪先生も、音楽の教員免許は持ってるみたいだから教師陣に入るしな。

理事長はなぜかオレになる予定なんだが。
まぁ、奨学金制度とか入試制度は、門戸を広くできるように、ユニークなものにするつもりではいるけど。

忙しくなる前だったら、産まれてくる子を見てくれたりするくらいはできるんじゃないかな。

宝月家も、優秀なチャイルドマインダーの人材を育成したりもしてるから、力になれることはあるかもしれない。

そんな悲観しないでさ、まずは賢正学園の澪さんにでも、相談してみたらどうかな?」

蓮太郎が言いたいことは言い終えたようなので私も少し釘をさした。

「いつまでも悩んでいるのも勝手だけど、朝食くらいは食べたらどう?
身体に悪いわよ。

……お邪魔したわね。」

それだけ言うと、私と蓮太郎は、水族館に行くべくホテルを出た。