ボーダー

水族館へは、車で5分だそうだ。
タクシーを呼んで、2人で向かった。

入り口で入場料1850円を払って、中に入る。

「美ら海だけ!」や「珍奇!」というステッカーのある水槽が、ここでしか見られない珍しいもののようだ。

隣にいるオレの婚約者は、昨年18歳となり、あと2年で成人と呼ばれる歳になるにも関わらず、子供みたいにはしゃいでいる。

「お掃除ダイバーさんに頑張ってください、の意味を込めて手を振ってみたら、振り返してくれたの!
何だか嬉しかった!」

サンゴの海の水槽を真上から覗けたり、クマノミがいたり、ヒトデやナマコの水槽に直に手を入れて触れたりもした。

ぶっちゃけ、海の生き物より、隣ではしゃぐ婚約者を見ている方がリフレッシュになる。

「こういうの好き!
婚約者さんと来れて良かった!」

「そう言ってもらえて良かった。
いい思い出になったよな。

お、あと20分くらいでイルカショーやる、ってさ。
好きだろ?こういうの。
見るか。」

何も言わなくても隣にいる女の趣味趣向が分かるのは、長く一緒にいるからだ。

「うん!
絶対可愛いよね、見たい!」

「どこか広いソファーとかで待っててくれる?
お手洗い行ってくる。」

そう言って婚約者の頭を撫でる。
すると、ハナも行く、と言う。
この人の多い中、婚約者を迷子にはさせられないから、そのほうがいいか。

「ん。了解。」

済ませて男子トイレから出る前に手を洗っていると、隣の洗面台に人が来た。

ふと鏡越しに隣の洗面台の人と目が合った。

向こうもオレとここで会うのは予想外だったらしく、パチ、と2度目をしばたたかせている。

今日は奥さんとデートらしい、レンだった。

カーキのポロシャツに白いパンツに黒いスニーカーの彼。

「奥さんとデートか。」

「お前も婚約者とデートだろうが。」

「まぁな。

あ、サンキューな。
お前と、妻のメイちゃんのおかげだ。
無事に恋人を婚約者に昇格させられたのは。」

オレがそう言うと気にするな、と言わんばかりに片手を上げて、ひらひらと振ってトイレから出たレン。

オレも行かないと、ハナを待たせてしまう。

トイレから出ると、オレの大事な婚約者は、さっきまでトイレにいたレンと、その奥さんのメイちゃんと仲良さげに何やら話をしていた。

「悪い、遅くなった。」

「あ、ミツ!
レンとメイちゃんも来てたの、偶然だよね!
一緒にイルカショー見よう、って話になってるの、いいよね!
ダブルデートだね!」

……こういうとこだよ、可愛いの。

「オレの奥さんも賛成してるし、どう?」

「可愛い婚約者のワガママなら、聞かないわけにいかないよ。
いいぜ。
人数は多いほうが楽しいしな。」

どうやら宝月夫婦は、美ら海水族館の後はパイナップルパークに行くようだ。
そこも同じなので、そこまで一緒に行動することにした。

イルカショーを見終わると、写真を撮ったりした。

深海のエリアで最後らしい。
そこも見終わると、美ら海水族館からレンの執事、武田さんの運転する車でパイナップルパークに向かった。

「どうせイチャついてて遅くなったんだろ、レン。
本当は、オレたちと同じくらいの時間に水族館入りするはずだったんじゃないか?」

「夫婦のイチャイチャは昨日2回と朝1回で終わりにした。
遅くなったのは、もう1組の夫婦をなんとかしたかったから。
夫婦の片割れの旦那の方は朝から出掛けてるみたいだし、何をやってるんだか。」

……宝月夫婦も大変だな。

パイナップルパークで写真を撮ったり、何だか可愛らしいパイナップルを模したパイナップル号に乗り、園内を周遊した。

スピーカーからパイナップルについての解説が流れてきていたので、いろいろ与太話している暇がなかった。

レストランでパイナップルピザを食べた後、また武田さんが運転する車に乗ってホテルに戻った。