ボーダー

首里城公園を見物した後、ハナと2人でホテルに戻った。

レンの妻が言うには、少し格式高いレストランでビュッフェをやるようだ。
ハナは彼女に引きずられて、行ってしまった。

オレはレンに呼ばれて、彼ら夫婦が過ごす部屋の向かいの部屋に入るように言われた。

そこでは、真や一成がワイシャツにベスト、ジャケットにスラックスに着替えていた。

「あのさ、何これ?」

「んー?
ハナたちもワンピース着るんだ、お前らがラフな服じゃバランス悪くなるから、ミツたちも、ちょっとかしこまった服装をしてほしくて。

たまたま、こっちのホテルで、執事の研修をしてるから。
その執事たちに無理言って、4着くらい拝借してきたんだ。

ミツも早く着替えちゃえ?
間に合わないぞ?
彼女の可愛いワンピース姿、見れないぞ。」

「……分かった、着るよ。」

手早く着替えて、ホテルの部屋を出る。
夕食会場に行くと、膝にかかる丈の可愛いワンピースに、ターコイズのネックレスを着けたハナがいた。
パンプスは少しヒールは低めだが、白だ。

「ミツ、スタッフからセッティングは完了したって連絡きたよ。
後は、お前が決めるだけだ、頑張れ!」

レンから耳打ちされた。
助かる。

レンとその奥さんには、あるサプライズへの協力を依頼している。

いつか、ハナが見たという夢。
確か、アメリカ行きの飛行機の機内だったか。

大学も決まったことだし、あの夢の通りにプロポーズをするべく、宝月夫婦に協力を依頼しているのだ。

「ハナ、夕飯食べ終わったら、先に部屋にいてくれるか?
頼むな。」

それだけ彼女に伝えて、オレはハナから少し離れてエレベーターに乗って、部屋に向かう。

「部屋を開けて、口をあんぐりさせているオレの大事な彼女。
ベッドに座るように言うと、これから起こることを勘付いているのだろうか。
ロボットみたいなカクカクとした動きでベッドに座る。

ベッドに座った彼女の目を見て、用意しておいた言葉を告げる。

「……ハナ。
華恵。

大学決まってから、言いたいことあったの。
今聞いてくれる?

……オレと結婚してください。

ハナが、弁護士っていう夢叶えたときに、籍入れたい、って考えてる。
何ならその前に結婚前提に一緒の家に住もう。

オレは一生かけて、ずっと片想いして、恋人になれた人を、奥さんとして幸せにしていきたいんだ。

オレでよかったら、お願いします。」

「……ミツ。
ううん、優作。
私で良ければ、お願いします。

私の隣はミツじゃなきゃ、多分ダメなんだと思う。
不束者ですが、よろしくお願いします。」

ぺこり、と頭を下げた婚約者。

頭を上げた彼女の瞳からは、一筋涙が伝っていた。

「大事な婚約者を泣かせる趣味はないんだけどな、オレ。」

「仕方ないでしょ、嬉しいんだもん!」

高校のインキャン。
あの後、初めて2人で迎えたクリスマス。
あの日に貰った指輪を、彼女は苦労しながら、指から外した。

この後、何をされるか分かってるんだな。
さすが、勘が鋭い婚約者だ。

小箱から指輪をそっと取り出して、華奢な彼女の指に嵌める。

「うん、目、開けていいよ?
やっぱり似合う。
さすがオレの婚約者。」

指の形を細く見せてくれるカーブが印象的なそれは、サイズピッタリで、ダイヤモンドの輝きも綺麗だ。

「……絶対、幸せにするから。
愛してる。」

婚約者にそう告げて、どちらからともなく始まるキスは、徐々に深くなる。

「はい、お二人さん、そこまでー!」

「続きはお風呂に入ってからにしたら?」

宝月夫婦に、黒沢夫婦。
いずれは夫婦になるだろう、麻紀ちゃんと真まで。
ドアの隙間から、一部始終をバッチリ見ていたようだ。

将輝と奈斗の例からして、盗音機とやらで映像も残しているだろう。
きっと、将来の挙式の際に流す映像にでも使用するつもりだな。
抜かりないな、まったく。

「お前らなー!
人の一世一代のプロポーズを覗くなよな……」

「とにかくホラ、用意して風呂入ろうぜ!」

一成と真に背中を押される。

「露天風呂、楽しみだし!
ハナも行こうよー!」

友佳と麻紀に背中を押されるようにして、ルームウェアを片手に大浴場へ向かおうとする婚約者の腕を引いて、耳元で囁く。

「……夜、楽しみにしてる。
寝かせる気ないし、疲れたって言っても止めてやらないから、そのつもりでな?」