しばらくして、ミツのお兄さん帰宅。

酔いつぶれた人たちを、巴さんと二人で家に送り届けて来たという。

布団を敷いてから、私とミツをじっと見つめる。何だか慣れない。
そんな私をよそに、お兄さんは真剣な顔で話し始める。

「優、ハナちゃん、気を付けておきなさい。今回の事件の黒幕は、帳 奈斗だ。
それと、霧生菜々美と昔絡んでいた女が不審な動きをしているらしい。」

「はあ……。
今日、忌々しい名前を聞くの、何度目だろ。
でも、どうして兄さんがそんなことを知ってるの?」

率直な疑問を、弟であるミツが尋ねる。

「昔、魔導学校の学級裁判に関わったものとして忠告しただけだ。」

「まさか…そんなこと、鈴原先生は一言も言ってなかった!
ハナのいじめのことと、ハナの祖母のことしかオレも聞いてないぞ!」

言い終えたミツが、しまったとでも言わんばかりに口を押さえる。

「話すんだな、優。
華恵ちゃんにとっては酷な事実だ。
しかし、彼女にはオレの口からもっとショッキングな事実を話さなければならないから。」

そう言われ、ミツはゆっくりと、言葉を選びながら話していく。
話を整理する。

私のお祖母ちゃん。
蒲田 華美《かまた はなみ》というらしい。
私が一人で公園にいたとき、話し相手になってくれたお祖母ちゃんが、私の祖母。
その人は、今もハッキリ覚えている。
ある有名な探偵さんの助手をしていたらしく、私が誘拐されたときに助けてくれた。

だけど、その後から公園にも現れなくなった。

果敢にも1人で誘拐犯に立ち向かって、殺されてしまったという。

大方、この世にはいないという予想はついていた。
いつもお祖母ちゃんのオーラを感じた公園からは、何も感じられなくなっていたのだから。

そう答えると、ミツのお兄さんは微笑んだ。

「さすが、華恵ちゃんは強い。
だが、これは耐えられるかな?
ハナちゃん、君は実は養子だ。
母親はどこかで生きているのか、それとももうこの世にはいないのか、不明だ。
父親は……オレたちの父親と同じく、殺されたようだがな……」

「おい兄さん!
なんでそんなこと……今言うんだよ!」

「……優。落ち着け。
華恵ちゃんの強さはお前が一番よく知ってるはずだろう?
いつかは言わなければならなかったことだ。」