ボーダー

「ねぇ、真たちで、うまく一成くんだけを、友佳から離してほしいの。

15分位で済むと思うんだ。」

「何か思い当たること、あるんだ?
麻紀。」

真くんの問いかけに、強く頷く麻紀。

「すぐ戻る。
メイちゃんなら余裕だよね、状況説明。
自分も、近々そうなる覚悟はあるわけだし?
……よろしく!」

首里城公園からホテルに戻ってきたときに、ホテルから10分弱歩いたところに、ドラッグストアがあるのは確認済みだ。

カードキーで部屋のロックを解除して、財布と携帯電話を、ショルダーバッグに詰めて、カーディガンを羽織って外に出る。
カードキーは鞄の中だ。

ドラッグストアで、2本入りの妊娠検査薬と、葉酸サプリメントを購入した。
自分で使うためではないにしろ、買うのは少し勇気がいった。

こんな気持ちに、なるんだろうか。
何年後か分からないけれど、婚約者と籍を入れた後に。

ホテルに戻る前に麻紀にメールをする。
まだ、友佳と一緒に、彼女の部屋に留まっているようだ。

友佳の部屋に行くと、麻紀がドアを開けてくれた。

「一応、葉酸サプリメントも。
あと、2回分の買ってきたから。
ないとは思うけど、万が一フライングだったときのために。

……覚悟も必要だろうから。
友佳だけじゃない、一成くんにもね。

2人で話し合ってみたらどうかな。
その上で、すぐにとは言わないから、覚悟ができたら使ってみるといいんじゃない?」

「あのさ、麻紀にハナ。
ありがと。

ごめん、迷惑かけてばっかりだ。」

「んー?
なぁに謝ってるの。
友佳らしくないぞー。」

「そうだよ友佳。
私は、さっきミツが晴れて恋人から婚約者になったわけだけど。
ちゃんとまだ10代で夫婦になれた友佳たちにはこのまま幸せでいてほしいんだからね。

友佳は悪いことしたわけじゃないんだから、謝らないの。
それくらい、人の親になるなら分かるよね?」

私たちは邪魔になるだけだから行こう、と麻紀の手を引いて、友佳の部屋から出た。

「メイちゃんから、メールが来てたわ。
レンの部屋に皆を集めてるって。
行こうか。」

『今、私と麻紀も合流する!
ごめん、結構時間かかっちゃった……』

彼女にメールだけ送信する。

盜音機version.2のGPS信号を辿りながらメイちゃんがいる部屋にたどり着いた。

コンコン、と部屋をノックすると、レンの奥さんであるメイちゃんが迎えてくれた。

「男性陣は皆、面白いくらいに口をポカンとさせながら話を聞いていたわ。
その筆頭が彼女の旦那ね。

そりゃそうよね。

妊娠初期症状なんて、よほど身体に注意してないとピンとこないもの。

これから本人たちがどうするかは、本人たちが決めること。
私たち外野が口を出すと逆にこじれるから、何もしないのが賢明ね。

……各自解散でいいわよ。」

メイちゃんにそう言われて、ミツと一緒に部屋に戻った。

何だか気まずい雰囲気になりながら2人でベッドに座る。

「あのさ。
いつから気付いてたんだ?友佳ちゃんが妊娠してるかもしれない、って。」

「んー?
何となく。
友佳は沖縄旅行初日から眠そうにしてたし、食欲もなさげだったから。
割と空調効いてた機内も、七分袖のシャツの袖を捲くってたしね。
妊娠するとホルモンの影響で熱っぽくなる人もいるから。

それに、インキャンの時に友佳は、早く籍入れて結婚したい、何ならデキ婚でもいい!
って言ってたからね。」

「さすが、同性同士は分かるんだな。
そういうの。
他の夫婦に世話焼くのもハナらしくて好きだ。

やっぱり、ハナを選んでよかった。
ご褒美あげる。

……止める気ないけど、覚悟出来てる?
可愛い婚約者さん。」

私が返事をする前に、深く唇が重なる。

「ん……っ……」

カーディガンも、婚約者とお揃いのパジャマもあっという間に脱がされて、ボルドーの下着姿にされる。

「珍しいね、その色。
勝負下着、ってやつ?」

旅行の前日に、麻紀が選んでくれた、ということは言わないでおこう。

「あっ……」

焦らすように、下着の上から触られる。

「直が、いい……」

「んー?おねだりするの上手い婚約者と夜楽しめて幸せ。」

キスをくれたあと、下着も外されて、私の上には、薄い布1枚を身に纏ったミツがいる状態。

「恥ずかしい……」

「恥ずかしがってる婚約者、エロくて可愛い。
可愛い声、聞かせて?」

私を鳴かせることのできる場所を、的確に刺激してくる。
頭のいい私の婚約者は、その全てを把握しているはずだ。

頭を撫でて、いつの間にか下着を脱いでいたミツが、後ろを向く。

「オレは、いつか、コレは無しで、とは思ってるけどさ。
学生の内に、ってわけにはいかないからちゃんとするよ?
そこは安心してほしい。」

きちんと、触れさせて確かめさせてくれるのが彼らしい。
優しい婚約者を持てて感謝だ。

深いキスをしながら、ゆっくり繋がる。

「愛してる。
ちゃんと幸せにするから。」

優しく、しかも耳元でその台詞を言うから、キュンとする。

「婚約者さん、これからもずっと一緒よ?
よろしくね。」

「っ……!
やべっ、今回早かった。
誰かさんが可愛いこと言うからだよ?

でも、オレとしてはまだまだイケるけど。
まだ足りないなら付き合って?」

何回目で、眠りについたのは何時だろう。
そんなことは分からないまま、気付いたら朝を迎えていた。